ニュース速報
ワールド

情報BOX:米大統領選、ハリス氏対トランプ氏で中絶問題はどうなるか

2024年07月25日(木)12時14分

 7月24日、米大統領選はバイデン大統領の撤退により、ハリス副大統領が民主党候補指名を勝ち取って、共和党候補のトランプ前大統領と対決する構図が出来上がりつつある。ウィスコンシン州ミルウォーキーで23日、代表撮影(2024年 ロイター)

David Sherfinski

[リッチモンド(米バージニア州) 24日 トムソン・ロイター財団] - 米大統領選はバイデン大統領の撤退により、ハリス副大統領が民主党候補指名を勝ち取って、共和党候補のトランプ前大統領と対決する構図が出来上がりつつある。

長らく人工妊娠中絶の権利擁護を訴えてきたハリス氏は既に、選挙戦でこの問題を重要争点とする方針を示唆している。

中絶問題について、ハリス氏が正式に民主党候補になってトランプ氏と戦えばどんな影響があるか、またハリス氏とバイデン氏の違いは何か、ハリス氏が政権を握れば実際にどうなるかといった点を以下にまとめた。

◎ハリス氏の立ち位置

少なくともハリス氏はカリフォルニア州司法長官時代から、中絶の権利や生殖医療へのアクセスを提唱してきた。

今年に入ってからは全国遊説中にミネソタ州の妊娠中絶施設を視察。現職の副大統領がそうした施設を訪れたのは初めてとみられる。

バイデン氏撤退表明後にデラウェア州で開いた選挙集会では、中絶の権利を守るための法整備を進める意向を表明。「トランプ氏が勝利すれば全ての州で中絶を違法化する連邦法に署名するのは分かっている以上、われわれは生殖の自由のために戦う」と宣言した。

◎トランプ氏の姿勢

トランプ氏は大統領在任中に連邦最高裁判事として3人の保守派を任命し、中絶を合憲とした「ロー対ウェード判決」を2022年6月に最高裁が覆す判断を下す流れをつくった。

しかし今回の選挙戦においてトランプ氏は、共和党が過去2年間で中絶に反対してきたことへの政治的反発を警戒しているように見える。

ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、中絶を全面的、もしくは大半のケースで合法にするべきとの意見が大多数だ。

またカンザス州とケンタッキー州では、中絶の権利を否定する方向の州憲法改正案が住民投票で否決されている。

トランプ氏もこれまでの選挙戦では、全米で中絶を禁じる法律に署名するつもりはなく、判断を各州に委ねる方針を示している。ただ大統領在任中は、妊娠20週目以降のほとんどの中絶を連邦ベースで禁止する考えに賛成していた。

共和党副大統領候補のバンス上院議員は以前、全米での中絶禁止に前向きな姿勢だったが、現在はトランプ氏の方針に従っている。

最近のFOXニュースのインタビューでは「トランプ氏が共和党のリーダーであり、中絶に関する彼の意見が党の支配的な見解となるというのが私の考えだ」と語った。

◎バイデン氏との差

バイデン大統領は中絶や生殖医療の機会を広げ、国外の中絶促進団体に対する予算の制限措置を撤回したほか、中絶に関する個人医療記録の保護強化のための新たなルール導入などに取り組んできた。

ただバイデン氏はカトリック教徒で、長い政治活動を通じて中絶に対する個人的な懸念も示してきている。

昨年の集会では「私はカトリックで中絶を好ましいとは思っていない。だが聞いてほしい。ロー対ウェード判決は正しかった」と発言した。

ウィリアム・アンド・メアリー大学で助教を務めるクレア・マッキニー氏は、中絶擁護派はバイデン氏に幾分不満を持っていたと指摘。「彼は決して最前線には立ってこなかった」とトムソン・ロイター財団に語った。

一方でハリス氏については「今回の選挙戦で既に中絶の権利を唱えるメッセンジャーになっており、ずっとオープンに自由に話している」という。

ミネソタ大学のポール・ゴレン教授(政治学)は、ハリス氏が当選すれば中絶問題に大きな注目を集めることができるが、具体的に遂行可能な政策は限られるかもしれないとの見方を示した。

「彼女の戦略や意思としては(選挙戦で)この問題に言及しようとするのは確実。(しかし)一貫した形で効果的にそれができるかどうかはまだ分からない」と分析する。

選挙後の議会は与野党の勢力伯仲が予想され、ハリス氏が今週約束したような「生殖の自由復活」のための法案が可決される公算は乏しい以上、実現は難しいかもしれない。

◎ハリス氏指名と党の中絶問題への熱量

既にハリス氏と側近らは、中絶問題を強調しつつある。

正式に選挙戦へ突入した翌日には、ハリス氏支持のある団体が、トランプ氏を中絶問題で攻撃するデジタル広告をリリースした。

中絶擁護団体「全ての人に生殖の自由を」のミニ・ティマラジュ代表はトムソン・ロイター財団に「ハリス氏の大統領選開始により、中絶が有権者を最も動かす争点の1つに据えられて生殖の自由を守る運動に大きな弾みが付き、トランプ氏とバンス氏を打ち負かす材料となったのは間違いない」と述べた。

中絶賛成派の民主党の女性政治家を支援している団体「エミリーズ・リスト」のジェシカ・マックラー代表は「共和党が私たちの生殖の権利に全面攻撃を仕掛けている今、この問題は民主党の勝利をもたらす力になっている。ハリス氏は私たちの最も強力な代弁者であり、メッセンジャーだ」と言い切った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏と11日会談 イラン巡り

ビジネス

EXCLUSIVE-米FRB、年内1─2回の利下げ

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 7
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 8
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中