ニュース速報
ワールド

世界的システム障害、航空便や医療など影響多岐に 脆弱性が露呈 

2024年07月20日(土)11時49分

世界各国で発生した大規模なシステム障害により、金融市場でも幅広く業務に影響が広がった。19日、ニューヨークで撮影(2024年 ロイター/David 'Dee' Delgado)

[19日 ロイター] - 世界各国で19日に発生した大規模なシステム障害は航空や医療、物流、金融など影響が多岐に広がり、相互接続されたネットワークの脆弱性が浮き彫りとなった。

障害は現在までに解消され、各サービスが再開しつつあるが、欠航や遅延した航空便、未処理となっている医療など各種予約・注文への対応が残っており、完全復旧にはなお時間を要するとみられる。

システム障害の原因となったのは米サイバーセキュリティー企業クラウドストライクのセキュリティーソフト「ファルコンセンサー」で、更新によってマイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の機能が停止し、画面が青くなるトラブルが相次いだ。

クラウドストライクはすぐにソフトを修正し、マイクロソフトも根本的原因を修正したと発表。

クラウドストライクのジョージ・カーツ最高経営責任者(CEO)は米NBCテレビの取材に対し、「影響を受けたすべての方々に深くお詫びする」と陳謝した。

米ホワイトハウス当局者は、バイデン大統領が障害について報告を受けたほか、クラウドストライクと連絡を取っていると説明。国土安全保障省サイバー・インフラ安全局(CISA)は、ハッカーが障害を利用しフィッシングなど有害な活動を行っていると指摘した。

米税関・国境警備局(CBP)は申請処理が遅延しており、国際貿易・渡航に関する問題の軽減に取り組んでいると述べた。

<多岐にわたる影響>

クラウドストライクの株価は11%急落。同社は世界に2万社以上の顧客を抱える。

D・A・デビッドソンのアナリスト、ジル・ルリア氏は「今回の件は世界のコンピューターシステムがいかに複雑に絡み合い、それがいかに脆弱かを示した」と指摘。クラウドストライクとマイクロソフトは今後同様の障害が生じないよう多くの対策を取る必要があるだろうとした。

航空便への影響は大きく、航空データ分析会社シリウムによると、全世界で19日に予定されていた11万便余りのうち5000便が欠航となった。

中でも、米デルタ航空は運航便の20%を欠航にするなど打撃が大きかったことが、運航情報追跡のフライトアウェアのデータで分かった。

ロサンゼルスからアムステルダム、シンガポールに至るまで、各地の空港ではシステム障害により手書き搭乗券で対応する事態となり、手続きが遅延した。

また、テレビ放映が中断され、米物流大手フェデックスの配達が遅延するといった影響も出た。

金融業界では、LSEGグループがニュース・データ・プラットフォームWorkspaceに障害が発生したと発表。

ただ、ロンドンでは正午までに問題の大半が解消。ロンドン証券取引所の取引に影響は出なかった。ニューヨーク証券取引所、ナスダックも、取引は正常に行われていると発表した。

米金融大手のバンク・オブ・アメリカ(BofA)やゴールドマン・サックス、シティグループなども、システムや業務に大きな影響は出ていない。JPモルガンでは一部のATM(現金自動預払機)が利用できなくなった。

米金融機関が参加するセキュリティー情報分析の共有を目的した組織「FS-ISAC」の広報担当者は、今回の障害による金融システム全体への影響はなかったと述べた。

米医療機関ではコールセンターや患者専用アプリが障害に見舞われた。

ただ、スペインの空港運営会社アエナや米ユナイテッド航空、豪コモンウェルス銀行(CBA)を含む多くの企業では同日内に問題が解消し、サービスが再開した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相答弁の撤回要求 日中外務高官協議

ビジネス

高市首相と会談、植田日銀総裁「利上げは今後のデータ

ビジネス

英中銀、投資銀業務分離規制の一部緩和検討か 抜本改

ワールド

経済対策、「しっかり必要な額」求める声多く=自民政
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中