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アングル:アパレル労働者が直面する気候変動リスク、求められるデータ整備

2024年02月11日(日)08時00分

 ファッション業界のサプライヤーは、工場の立地や労働者の安全確保について決定する際に気候変動リスクを考慮し始めている。ただ、判断材料となる良質なデータが不足しており、取り組みは遅れている。写真は2021年8月、ダッカにあるシビル・エンジニアリング社の縫製工場で、昼食前に手を洗う従業員ら(2024年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

Md. Tahmid Zami

[ダッカ 7日 トムソン・ロイター財団] - ファッション業界のサプライヤーは、工場の立地や労働者の安全確保について決定する際に気候変動リスクを考慮し始めている。ただ、判断材料となる良質なデータが不足しており、取り組みは遅れている。

バングラデシュの大手アパレルサプライヤー企業、チーム・グループの持続可能性責任者、モハマド・モノワー・ホセイン氏は「気候変動はサプライチェーン(供給網)に混乱をもたらすリスクがあるため、長期的な視点で事業を展開するためには、そうしたリスクを考慮しなければならない」と語る。同社は現在、新工場を建設する際に土地の標高と洪水リスクを考慮している。

しかし、同氏によると、バングラデシュのアパレル産業の多くは、工場とその労働者が直面する脅威について信頼に足る情報が不足しているため、同様の対策に苦心している。

<データ不足>

バングラデシュのファッション業界は近年、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に重点を置いてきた。しかし、極端な熱波から洪水に至るまで、直接的な自然災害の脅威に備える取り組みは始まったばかりだ。

気候変動がカンボジアのアパレル産業に与える影響について研究している英ノッティンガム大学の衣料品産業専門家、サビーナ・ローレニューク氏は「緩和策(排出量削減)に注目が集まるあまり、ある意味で適応策がおざなりになっている」と語る。

同氏らによる調査では、例えばカンボジアの労働者の半数以上が、気候変動に起因する酷暑や洪水に直面し、収入や健康に影響が及んでいることが分かった。

米コーネル大学などの研究者は1月に発表した論文で、主要なアパレル供給国は脅威に適応しない限り、暑さと洪水のリスクによって2050年までにアパレル輸出収入の68%と、860万人の雇用を失う恐れがあると警告した。

こうした研究により、世界のファッション業界が気候変動への対応に失敗した場合のコストは数値化されている。しかし個々のアパレル企業が対策を打つためには、場所や工場ごとのデータが必要だ。

ダッカのBRAC大学は、そうしたデータの整備に取り組んでいる。同大の「Mapped in Bangladesh」プロジェクトは、工場ごとの環境持続可能性、労働基準、災害リスクに関するデータを収集し、地図上に表示(マッピング)している。

プロジェクトリーダーのマティン・サード・アブドラ氏は「私たちはブランドのサプライチェーンに関する非常に詳細なデータを提供している」と語る。既に業界や政府に利用されており、投資を適切な場所に向かわせるのに役立つ可能性があるという。

<労働者の経験>

気候変動リスクの影響を判断する上で重要なことのひとつが、工場労働者自身の声を聞くことだと研究者は言う。

例えば、ダッカ近郊で縫製工場を営むナスリンさん(40)はトムソン・ロイター財団の取材に対し、不規則な大雨によって道路が泥水に埋まり、徒歩通勤が困難になることがあるほか、夏は年々暑くなり、家にいるのが耐え難くなると語った。

グローバル・ワーカー・ダイアログ(GWD)などの組織は、労働者からこうした話を集めている。エグゼクティブディレクターのガイ・スチュアート氏は、工場への冷房システム導入が効果的な投資であることは大半の企業が分かっているが、貧しい労働者が工場外で暑さなどの脅威にさらされ、生産性にも影響を及ぼすリスクは理解されていない可能性があると言う。

低所得の工場従業員の多くは、狭く暑い部屋で身を寄せ合って暮らしている。規制当局、消費者、そして業界の問題に関心を持つ投資家も、こうした現実は見えていないことが多い。

<データから行動へ>

一部の製造業者は、労働者の視点を含む新たなデータを意思決定に取り入れるよう努めている。

バングラデシュの首都ダッカ近郊にあるチーム・グループの工場労働者らは昨年、自分たちの40%が徒歩通勤で通る歩道が大雨の際に浸水し、遅刻や欠勤につながっていると訴えた。同社はその後、歩道橋の建設費を負担し、通勤経路の安全性を確保した。

しかし、より大きな脅威に対処するには協調的な取り組みと支出が必要だとGWDのスチュアート氏は言う。例えば政府は、気候変動に耐えられる住宅や道路建設に資金を出し、アパレル業界はそのために必要な税金を納める、といった仕組みだ。

十分な財政資金を調達できるかどうかは、信頼できるデータの入手にかかっているほか、適切な規制の導入も鍵を握るとスチュアート氏は語った。

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