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アングル:中国の規制強化は来年も継続か、不透明感和らぐ分野も
12月21日、中国政府は今年、規制面でかつてないほど強力な締め付けを行って市場の動揺を招き、幾つものM&A(合併・買収)案件がとん挫した。北京で2020年4月撮影(2021年 ロイター/Thomas Peter)
[香港 21日 ロイター] - 中国政府は今年、規制面でかつてないほど強力な締め付けを行って市場の動揺を招き、幾つものM&A(合併・買収)案件がとん挫した。ロイターが取材した銀行関係者や法律専門家の話では、規制厳格化の流れは来年も続く見通しだ。ただルールが明確化され、投資家にとって規制環境の不透明感がある程度和らぐ分野もありそうだ。
この1年にわたって中国政府は独占禁止法違反の摘発や、営利目的の教育事業禁止を打ち出したほか、不動産開発会社の野放図な借り入れを抑え、複数の中国企業による海外上場を不可能にした。専門家の見立てでは、来年になってもこうした当局の方針は変わらず、特にデータ保護と国家安全保障を脅かすM&Aの対応が重視され、民間企業の統制も強まる。
調査会社ロジウム・グループの中国市場調査ディレクター、ローガン・ライト氏は「投資家は過去1年で一連の新たな規制リスクを考慮せざるを得なくなった。これらの懸念がすぐに消えることはない。われわれは一部官僚機構がここ数カ月で権限拡大に成功する光景も目にしてきた。来年、投資家にとって規制面で心配すべき範囲が広がることになる」と指摘した。
中国政府は11月、国家市場監督管理総局(SAMR)の内局の1つだった独占禁止局を国家独占禁止局に格上げし、案件審査により多くの資源を投入できるようになっている。
新たな規制措置の兆しとしてロイターが先週報じたのは、オンライン証券会社が中国本土の顧客向けに海外証券取引サービスを提供するのを当局が禁じる計画を練っているという動きだ。データの安全性と資金流出を巡る懸念が理由という。
一方、中国政府はかつてメディア企業に限定していた民間企業の少数株保有を、重要なデータを大量に処理する企業に対しても実行している。複数の関係者がロイターに明かした。
法律事務所リンクレーターズの上海駐在弁護士アレックス・ロバーツ氏は、当局が今後巨大IT企業のネットワークセキュリティーをより深く調査し、データ管理と独占禁止法の取り締まりという異なる2つの目的の監督作業がより重なり合ってくるだろうとみている。
こうした規制強化の背景には、来年の共産党大会で習近平国家主席の3期目続投が承認されることがほぼ確実視されているという事情がある。香港のオリエント・キャピタル・リサーチのマネジングディレクター、アンドリュー・コリアー氏は「(政府の)統制強化は、鄧小平氏が経済の緩やかな改革開放に乗り出して以来の期間では未曾有の現象になっている」と述べた。
<ルール整備の動き>
規制面での締め付けは、習氏が掲げる(1)民間セクターに対する共産党の統制強化(2)より平等な富の配分(3)企業活動における規律重視--といった経済上の政策課題とも整合的だ。
コリアー氏は「この規制体系が完成したとは思えない。機能するまでにはあと数年かかるだろう」と話す。
中国の規制に関する不透明感によって投資家、特にプライベートエクイティーとベンチャーファンドは資金を振り向ける上で慎重な態度を取り、結果としてデューディリジェンス(投資先の精査)が長引いたり、バリュエーションを巡る協議が難しくなったりしている、と銀行関係者は説明した。そのため多くの投資家は、半導体や新エネルギー関連技術、政府の低炭素化目標達成に役立つ分野など当局の「覚えがめでたい」セクターを重視する方針に舵を切っているという。
それでもM&A当事者の間からは、当局の審査が必要なデータ関連企業の海外上場規制についての新たな提案が、透明性の向上につながると期待する声が出ている。中国サイバースペース管理局(CAC)は数カ月のうちに、国家安全保障にかかわる大量のデータを取り扱う企業が海外上場を目指す場合の審査条件を定めるルールの最終版をまとめるとみられる。
同時に証券当局は、「変動持ち分事業体(VIE)ストラクチャー」を通じた中国企業の海外上場への監視を強化する見通し。VIEストラクチャーはこれまで、通信などの重要産業の企業が外国投資ルール適用を回避する手段として利用してきた。
法律事務所デービス・ポーク・アンド・ウォードウェルのパートナーで香港に駐在するチュー・ヤン氏は「来年は詳しいルールが整備される年になるだろう。特に今後数カ月でレッドチップ(香港上場の中国政府系企業)に関する待望のルールが公表される点からすると、来年この分野では規制上の不透明感が和らぐとの全般的な期待が広がっている」と述べた。
(Kane Wu記者、Julie Zhu記者)