ニュース速報

ワールド

日本政府、石炭火力の輸出支援を「厳格化」 脱炭素化へ誘導 

2020年07月09日(木)22時28分

 7月9日、政府は、二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、批判が強い石炭火力発電の輸出支援について、これまでの支援要件を厳格化することを決めた。写真は2013年1月、都内で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 9日 ロイター] - 政府は9日、二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、批判が強い石炭火力発電の輸出支援について、これまでの支援要件を厳格化することを決めた。現状でも石炭火力発電を選択せざるを得ない国があるとし、そうした国への輸出支援も、脱炭素化に向けた誘導を行うことを条件としている。

<新たな石炭火力、2国間協議持たない国「支援せず」>

政府が9日開催した「経協インフラ戦略会議」で決めた新たな輸出戦略では、再生可能エネルギーや水素、カーボンリサイクル等CO2排出削減に資するあらゆる選択肢の提案や、パリ協定の目標達成に向けた長期戦略など脱炭素に向けた政策の策定支援を行う「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進することを基本方針とした。

今後、新たに計画される石炭火力発電プロジェクトについては「エネルギー政策や環境政策に係る2国間協議の枠組みを持たないなど、日本が相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題・脱炭素に向けた方針を知悉(ちしつ)していない国に対しては、政府として支援しないことを原則とする」とした。

一方、石炭火力を選択せざるを得ない国に対しては、脱炭素化に移行する一環として、日本の高効率石炭火力へ要請があった場合には、その国が脱炭素化に向かい、行動変容を図ることを条件として、超々臨界圧(USC)以上であり、日本の最先端技術を活用した環境性能がトップクラスのものの導入を支援するとした。

<梶山経産相「現実的な一歩」、小泉環境相「基本として原則支援しない」>

梶山弘志経済産業相は会見で「石炭火力発電の輸出支援の厳格化を決めた」と述べ「一足飛びにゼロというわけにはいかない。より現実的な一歩を踏み出すということ」と述べた。一方、小泉進次郎環境相は「最も重視してもらいたいのは、基本方針として原則、支援しないこと。今回、そういった結果になった」と述べ、こだわってきた「支援しないことを原則とする」という文言が入ったことを評価した。

エネルギーを所管する経産省としては、日本の高い技術による石炭火力発電を必要とする国は多いという認識にある。一方で、脱炭素化は必然のものとなっており、関係省庁間でも、輸出相手国の行動変容を促すことが必要との認識は共有した。

新興国に対し、石炭火力輸出支援を行っている日本への批判は高まっていた。昨年12月に気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)に出席した小泉環境相が問題を提起。今年2月下旬、石炭火力発電の輸出条件の見直しを話し合うことで環境省や経産省などの関係省庁が合意、協議を続けてきた。

<エネルギーミックス見直しにつながるか>

小泉環境相は「来年のエネルギーミックス、ドミノが倒れるように、脱炭素化社会の実現に向け議論する素地ができたと思っている」とし「COP26はCOP25より、前向きなものを持っていけるのは間違いない」と述べ、来年予定されているエネルギーミックスの見直しにも自信を示した。

石炭火力発電の海外輸出に関してはこれまで、1)エネルギーの安全保障及び経済性の観点から石炭を選択せざるを得ない場合、2)日本の高効率石炭火力発電への要請があった場合、3)相手国のエネルギー政策や気候変動政策と整合性があること、4)原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧発電方式)以上の発電設備の使用、という4要件を定めていた。

また、同日、経産省は、洋上風力に関する官民協議会を立ち上げることを決めた。課題の分析やコスト削減などについて協議を進める。17日に初会合を開き、課題解決と導入拡大に向けた具体的な方向性を示す「洋上風力産業ビジョン」を作成する。

*内容を追加しました。

(清水律子 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルーブル美術館強盗、仏国内で批判 政府が警備巡り緊

ビジネス

米韓の通貨スワップ協議せず、貿易合意に不適切=韓国

ワールド

自民と維新、連立政権樹立で正式合意 あす「高市首相

ワールド

プーチン氏のハンガリー訪問、好ましくない=EU外相
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中