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トランプ氏、暴力鎮圧のため米軍動員に言及 大都市で抗議続く

2020年06月02日(火)17時04分

トランプ米大統領は1日、全米で激化している黒人男性暴行死を巡る抗議デモに対する各州知事の対応を批判し、より強硬な姿勢で臨むべきとの考えを示した。オレゴン州ポートランドで5月撮影(2019年 ロイター/TERRAY SYLVESTER)

[ワシントン/ミネアポリス 1日 ロイター] - トランプ米大統領は1日、全米で激化している黒人男性暴行死を巡る抗議デモを解決するため、米軍を動員する構えを示した。この直後、警官隊がゴム弾と催涙ガスを使ってホワイトハウス前で抗議活動を行っていたデモ隊を排除。トランプ大統領は、徒歩でホワイトハウス前の広場を横切って前夜の抗議活動で部分的に被害を受けた教会を訪れ、聖書を手に写真に収まった。

トランプ氏がホワイトハウスのローズガーデンで軍の動員に言及した後も、夜になると全米の都市部で7日連続となる暴力的な抗議行動が発生。ロサンゼルスでは商店が放火され、ニューヨークでは略奪行為が起きた。

大統領はローズガーデンで「市長や知事は暴力が鎮圧されるまで圧倒的な法執行機関のプレゼンスを築かなければならない」と指摘。「市や州が住民の生命や財産を守るのに必要な行動を取らなければ私が米軍を動員し、問題を迅速に解決する」と述べた。

大統領はこの演説の後、ホワイトハウス前の広場を通って向かいのセントジョンズ・エピスコパル教会まで歩き、聖書を手に娘のイヴァンカ氏やバー司法長官とともに写真に収まった。

エピスコパル教会ワシントン教区のカリー司教は、「彼(大統領)は、党派政治の目的のために教会と聖書を利用した」とツイートし、大統領が写真撮影のために、前夜の抗議活動で一部が放火の被害を受けた同教会を利用したと批判した。

ホワイトハウス前の抗議デモ排除を行ったのは、首都コロンビア特別区の警察だけでなく、州兵(ナショナルガード)やシークレットサービス、国土安全保障省の警察も含まれていた。ホワイトハウスは、夜間外出禁止令に先立つ措置だったと説明した。

首都の騒動から数時間後、ニューヨークのブルックリンでは、数千人が「今こそ正義を」と叫びながら行進した。マンハッタンの五番街では、午後11時の夜間外出禁止令を前に、群衆が高級店の窓を壊したり略奪を働く様子がテレビで放映された。デブラシオ市長は、2日は夜間外出禁止令が午後8時からに前倒しされると述べた。

<ハリウッドでは火災>

カリフォルニア州のハリウッドでは、ドラッグストアの正面ドアが壊され、数十人の人々が商品を略奪する様子がテレビで放送された。

米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が白人警官から首を圧迫され死亡した事件への抗議活動は全米数十の都市に拡大している。

独立検視官らは1日、遺族の要請を受けて行った検視の結果、死因は「窒息」で、殺人により死亡したと断定した。報告書は、フロイドさんの死には警官3人が関与したとしている。

また、郡検死官は、フロイドさんの死が窒息による殺人だったとする検死所見を公表した。それによると、フロイドさんは警官に押さえつけられている間に心肺停止に陥った。ほかに動脈硬化と高血圧性の心臓病があり、フェンタニル中毒と最近のメタンフェタミンの使用があったという。

フロイドさんの死に関連し、第3級殺人と故殺の容疑で訴追された元警官のデレク・ショビン容疑者は保釈保証金50万ドルを支払って保釈され、今月8日に出廷する見通しだ。

米国で警察による人種差別に対する抗議活動が起きるのはこれが初めてではない。フロイドさんの死は、政治や人種による米国社会の分断をあらためて浮き彫りにした。

デモが行われている多くの都市は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出制限が緩和され、経済活動の再開に乗り出したばかりだ。全米で10万4000人以上が死亡し、4000万人超の失業者を出した新型コロナのパンデミック(世界的大流行)では、アフリカ系米国人が感染者に占める割合が高くなっている。

外出禁止令は全米数十の都市で敷かれ、公民権運動を主導したキング牧師が暗殺された1968年以来の規模となっている。23の州と首都ワシントンでは州兵が動員されている。

一連のデモに対するトランプ大統領の対応を巡っては、国の結束を呼び掛け根本的な問題の解決を目指す代わりに衝突や人種間の対立をあおっているとの批判が出ている。

11月の米大統領選に向け民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領は1日、デラウェア州で黒人指導者と面会し、自身が大統領に就任すれば100日以内に警察の監督機関を新設する考えを示した。

*内容と見出しを更新し、再構成しました。

ロイター
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