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トランプ氏弾劾可否、法学者見解分かれる 下院司法委で議論開始

2019年12月05日(木)06時50分

米議会下院司法委員会は4日、トランプ大統領(共和党)のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで憲法学者らを招き公聴会を開いた(2019年 ロイター/LOREN ELLIOTT)

[ワシントン 4日 ロイター] - 米議会下院司法委員会は4日、トランプ大統領(共和党)のウクライナ疑惑を巡る弾劾手続きで憲法学者らを招き公聴会を開いた。民主党が招いた法学者3人はトランプ氏の行動は職権乱用や議会妨害、司法妨害などに当たるとし、弾劾可能との見解を示した。

共和党が招いた法学者は、民主党が主導する弾劾調査は「ずさん」で「急場しのぎ」的なもので、問題とされている出来事に直接触れている人物からの証言を得ていないと指摘。これまでに集められた証拠はトランプ氏が「明確な犯罪行為」を行ったことを示すものではないと述べた。

トランプ氏に対する弾劾調査で問題となっているのは7月25日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談。来年の大統領選で再選を目指すトランプ氏が職権を利用し政敵バイデン前副大統領(民主党)を捜査するよう圧力をかけた疑いが持たれている。

この日の公聴会は下院司法委としては初めてのもの。前日は下院情報特別委員会が、トランプ氏が来年の大統領選再選を狙って外国の選挙干渉を求めたほか、国家安全保障を危険にさらし、議会妨害も指示したと非難する弾劾調査報告書を公表。同委員会は報告書を13対9の賛成多数で承認した。

トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するために訪れていたロンドンで、下院情報特別委の弾劾調査報告書は「冗談」だとし、民主党に対し「米国を愛しているのだろうか」と述べた。

この日の公聴会では、民主党が招いたハーバード大学のノア・フェルドマン教授が、18世紀に憲法が起草された時、草案者は「現職の大統領が職権を乱用して大統領選の結果を自身に有利になるよう歪める」と懸念していたとし、トランプ氏の行動はまさにこの懸念を体現すると指摘。「個人的な利益のために職権を乱用する大統領を弾劾できなければ、われわれは民主主義の国に住んでいるとは言えない。君主主義、もしくは独裁主義の下で暮らしていることになる」と述べた。

スタンフォード大学のパメラ・カーラン教授は、トランプ大統領が外国に対し米選挙に介入するよう要請することで職権を乱用したとし、トランプ氏の行動は憲法の下で贈収賄と解釈されるとの見解を表明。トランプ氏のウクライナに対する要求は贈収賄に当たるかとの質問に対し、「その通りだ」と答えた。

共和党が招いた唯一の法学者、ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・ターリー教授は、トランプ氏の行動は贈収賄には当たらないと指摘。集められた証拠は民主党の主張を裏付けるものではないとの見解を示した。ただ、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談について、政敵捜査の見返りとして米国の軍事支援を利用したことが「証明されれば、弾劾可能な事案となる可能性はある」と述べた。ターリー教授は、2016年大統領選でトランプ氏に投票していないことを明らかにしている。

ノースカロライナ大学のマイケル・ゲルハート教授は、共和党は「大統領による憲法に対する攻撃を看過した」と指摘。「議会が今回の件で弾劾に失敗すれば、弾劾手続きは全ての意味を失う。これに伴い、米国の地に国王が擁立されることを防ぐ憲法の安全装置が失われることになる。大統領であっても憲法および法律を超越することはできない」と述べた。

司法委は、下院が弾劾手続きを開始した後に辞任したニクソン元大統領(共和党)、および下院に弾劾されたものの上院が認めなかったクリントン元大統領(民主党)とトランプ氏がどのように異なるか、法学者らに見解を示すよう求めた。司法委は弾劾訴追を決定した場合、訴追状に当たる弾劾条項を作成する権限を持つ。

ロイター
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