ニュース速報

ワールド

香港デモ隊に警官発砲、1人重体 行政長官「抗議は人民の敵」

2019年11月12日(火)01時16分

 11月11日、香港で11日、警官がデモ隊に実弾を発砲し、1人が負傷した。写真は香港で地面にスプレーペイントを塗る抗議者(2019年 ロイター/Shannon Stapleton)

[香港 11日 ロイター] - 香港で11日、警官がデモ隊に実弾を発砲し、1人が負傷した。病院関係者によると負傷者は重体。香港で続く抗議デモは24週間目に突入したが、平日の勤務時間帯に暴力行為が起きるのはまれ。

抗議デモは先週末にも各地で行われ、警官とデモ隊が激しく衝突し、混乱が広がっている。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は声明で、「暴力のエスカレートによって香港政府がいわゆる政治的要求を受け入れる圧力に屈するという希望的観測をまだ持っているなら、この声明ではっきりさせる。そうしたことは起こらない」と強調。「暴力行為は民主主義の要求をはるかに超えており、デモ参加者は今や人民の敵だ」と非難した。

警察は香港島東部の西湾河(サイワンホー)でデモ隊に至近距離で実弾を発砲。1人が負傷したと発表した。また、別の2つの地区で警官が銃を抜いたと明らかにした。

ビデオ映像には、抗議活動者が倒れている様子が映し出されており、流血しているもよう。警察は催涙スプレーを発射し、近くの女性を抑えつけている。警官にはプラスチック製の箱が投げつけられている。

警察は声明で、過激なデモ隊が香港全域の複数の場所でバリケードを築いていると指摘し、デモ隊に「違法な行為を即座にやめる」よう警告した。

警察は8月、威嚇のため空に向けて初めて実弾を発砲。その後、10月には18歳と14歳のデモ参加者に実弾を発砲し、負傷させている。

また警察は11日、ビジネス街の中環(セントラル)で催涙ガスを発射した。一部のデモ参加者は道路を封鎖し、昼休み中の会社員らは歩道に集まり反政府的な言葉を浴びせた。通行人の中には催涙ガスを避けようと、近くの商業施設に駆け込む人もいた。

香港ではほぼ毎日抗議デモが起き、ビジネスに悪影響を与え、政府への圧力が高まっている。しかし銀行の本店やブランド店などが集中する中環で、平日の勤務時間帯に催涙ガスが使用されることはめったにない。

西湾河に住む36歳の住民によると、抗議活動者がゴミを投げて道路を封鎖しようとしていたところに警官が駆けつけ、直接発砲した。「パン、パン、パンという音が3回聞こえた」という。

このほか、インターネット上で拡散している動画では、新界地区の商業施設「馬鞍山広場」の周辺とみられる場所で、男が別の人物にガソリンを浴びせ、火をつけている様子が映っている。この人物はシャツを引き裂き火を消すことができた。ロイターはこの映像の真偽を確認できていない。

病院管理局によると、男性1人が重度のやけどで搬送され、重体だという。また、西湾河で負傷したとみられる21歳の男性が病院に運び込まれ、手術を受けている。

警察の実弾発砲の情報が伝わると、複数の大学のキャンパスで学生、デモ隊、警察の間で衝突が起きた。目撃者が明らかにした。

香港中文大学では学生が火炎瓶を投げ付けバリケードを築き、警察は催涙ガスを使用した。香港理工大学では学生ががれきに放火した。

この日香港では、駅やショッピングセンターの近くには機動隊が配備されており、地下鉄など一部の交通機関は早朝から運行に影響が出ている。抗議活動者はバリケードを使って香港全土で道路を封鎖している。

週末の抗議活動では一部のデモ参加者が暴徒化し、新界地区や九竜地区で道路を封鎖したり飲食店を破壊したりしたため、警察隊が催涙弾を発射して強制排除に乗り出した。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反

ビジネス

ユーロ圏第3四半期GDP、前期比+0.3%に上方修
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中