ニュース速報

ワールド

中国が対米報復関税からLNG除外、カード温存の裏に別事情も

2018年07月06日(金)09時11分

 7月5日、中国は、米政府が6日に発動する対中制裁関税への報復として同時に適用する追加関税対象から米国の液化天然ガス(LNG)を除外した。写真は中国石油化工(シノペック)のLNG貯蔵タンク。天津で2月撮影。提供写真(2018年 ロイター/China Stringer Network)

[北京 5日 ロイター] - 中国は、米政府が6日に発動する対中制裁関税への報復として同時に適用する追加関税対象から米国の液化天然ガス(LNG)を除外した。

これは、貿易摩擦がさらに激化した場合に行使する手段として温存する狙いだ。ただ、大気汚染対策として家庭や企業のエネルギー利用を石炭からガスに切り替える取り組みを確実に進めたいという中国側の事情も浮き彫りになった。

ある国有石油・ガス会社の幹部は「(貿易)摩擦がエスカレートすれば、政府はLNGを(制裁リストに)ちゅうちょせず追加する(と予想される)」と話した。

米国の中国向けLNG輸出の規模は、年間約120億ドル相当に上る原油に比べれば今のところずっと小さい。それでもアナリストによると、中国が大気浄化対策を推進するとともに、米国からのLNG輸入が跳ね上がってもおかしくない。

モルガン・スタンレーは、昨年10億ドルだった中国の米国産LNG輸入は、向こう2─3年で最大90億ドルに増加する可能性があると試算している。

こうした輸入が懸案の中国の対米黒字を解消するには程遠いといえ、輸入拡大によって通商面で中国が新たな対米カードを得られる形になる。

もっとも一部業界筋は、中国が米国産LNGに追加関税を課した場合、代わりの調達先が限られることから自分たちも悪影響を被ると警告する。中国商務省系シンクタンクの研究員は「われわれが米国産LNGに関税を課すと、支払わなければならない機会費用がずっと膨らんでしまう。大豆なら中国は別の国からの輸入に転換するのがずっと簡単で、関税を課せば米国に与える痛手はより大きくなるが、エネルギー製品への関税は米中ともに傷を負う」と説明した。

中国国内の天然ガス需要は今年1─5月に17.6%増加し、政府が想定する年7─8%増を大きく上回る伸びとなっている。アナリストの1人は「中国のガス生産が限定されている以上、われわれがエネルギー消費に占めるガスの割合を10%に高める目標を達成するには、輸入拡大が不可欠だ」と指摘し、中国のエネルギー安全保障の観点では米国のLNGは必要になると付け加えた。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中