ニュース速報

ワールド

パリ攻撃犯の拠点で8人拘束、イスラム国はNY攻撃示唆か

2015年11月19日(木)15時36分

 11月18日、パリ同時攻撃の主犯格とされるアブデルハミド・アバウド容疑者について、捜査当局は、潜伏先と見られるアパート(写真)で身柄を拘束した人物のなかに同容疑者が含まれていないことを明らかにした。(2015年 ロイター/Gonzalo Fuentes)

[サンドニ(フランス) 18日 ロイター] - フランス警察は18日未明、前週末のパリ同時攻撃犯の潜伏先とみられるパリ北部サンドニ地区のアパートを急襲し、8人の身柄を拘束した。踏み込んだ際に女1人が自爆したほか、銃撃戦で少なくとも1人が死亡した。

関係筋によると、このグループはパリのビジネス街への攻撃を計画していた。また、過激派組織「イスラム国」が米ニューヨークへの攻撃をほのめかす映像を新しく公開するなど、新たな攻撃に対する警戒が高まっている。

パリ検察のフランソワ・モラン検事は18日夜の会見で「新たなテロリスト拠点を制圧した」と説明。ただ、この急襲で死亡した人物の身元は確認できていないとしており、パリ攻撃の主犯格とされるベルギー籍のアブデルハミド・アバウド容疑者が死亡したかは分からない。

同検事はまた、身柄を拘束した人物のなかに同容疑者のほか、実行犯の1人として指名手配されているアブデスラム・サラ容疑者は含まれていないことを明らかにした。

捜査当局に近い筋はロイターに対し、自爆した女はアバウド容疑者のいとこである可能性があると語った。米紙ワシントン・ポストは18日、当局者2人の情報として、アバウド容疑者が未明の銃撃戦で死亡したと伝えている。

警察関係者らはロイターに対し、サンドニに潜伏していた容疑者らが新たな攻撃を計画していたと指摘。「この新しい集団は、ラ・デファンスへの攻撃を計画していた」と1人の関係筋は、パリ近郊にある金融ビジネス街を狙った計画があったことを明らかにした。

これとは別に、フランス南部のマルセイユでこの日、ユダヤ人学校の教諭が過激派組織「イスラム国」のTシャツを着た人物に刃物で刺される事件が起きた。犯人は逃走したが、教諭の生命に危険はない。

<高まる警戒>

パリで先週末発生し129人の命を奪った同時多発攻撃について、シリアやイラクに支配地域を広げるイスラム国は犯行声明を出し、攻撃はフランスの軍事行動に対する報復と表明している。

イスラム国はシリアでの空爆に参加した国々は同じ運命をたどるとした上で、米首都ワシントンを攻撃するとのビデオ声明も出しており、同組織に対する警戒が世界各地で高まっている。

今回、米ニューヨークへの攻撃をほのめかす映像を新しく公開したことについて、デブラシオ市長は18日、攻撃の「具体的で信用性の高い脅威」は確認されていないと述べた。映像には新しい要素は見当たらず、「急ごしらえ」のものだという。

民間情報機関SITEインテリジェンスによると、今回公開されたビデオは6分程度で、大半はパリやオランド仏大統領の映像とみられる。武装したメンバーが自爆攻撃の準備をするためジャケットのチャックを締める場面に加えて、タイムズ・スクエアなど同市の観光名所の短い映像も挿入されているという。

SITEのディレクターであるリタ・カッツ氏はロイターの取材に対し、電子メールで「ビデオに映っているニューヨークの映像は、4月に公開されたものと同じだった。つまり、同市が引き続きイスラム国の標的となっていることを示すものであり、改めてパニックに陥る必要はない」と説明した。

米国のリサ・モナコ大統領補佐官(テロ対策担当)は18日、政府当局者は「イスラム国」による攻撃を警戒しているが、現時点で米国に対する確かな脅迫はない、と明らかにした。

一方、スウェーデン治安当局は18日、テロ警戒水準を5段階のうち上から2番目に引き上げたと発表。攻撃の可能性を示す「具体的な情報」を得たとして、容疑者1人の行方を追っていると明らかにした。

パリ同時多発攻撃事件との関連性については現時点では明らかではないが、イスラム国の脅威がテロ警戒水準を引き上げた理由と、当局者は説明している。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中