焦点:金利正常化占う試金石、近く日銀委員人事案 リフレ派も取り沙汰
日本銀行本店前の交通標識。2023年10月、都内で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon
Takaya Yamaguchi Yoshifumi Takemoto
[東京 20日 ロイター] - 政府が近く提示する日銀の野口旭、中川順子両審議委員の後任候補は、高市早苗首相がどこまで利上げを許容するかを占う試金石となりそうだ。マクロ政策立案の礎となる政府会議ではリフレ派の登用が際立ち、続く日銀委員の入れ替えでも同じような人選になる可能性もあると市場は身構えている。
<25日にも衆参に提示>
複数の政府、与党関係者によると、国会同意人事案は25日にも衆参両院に提示される。提示日程はまだ確定していないが、3月31日に任期満了となる野口審議委員の後任候補と併せ、6月29日に任期を迎える中川委員の後任も示される公算が大きい。
野口委員は、アベノミクス政策を引き継いだ菅義偉政権下で2021年に選出された。正副総裁を含む9人の政策委員会のうち、「最後のリフレ派」とされる。一方、中川委員は中立的な存在で知られる。
高市政権は、日銀委員の選定に先立つ経済財政諮問会議の人選で、元日銀副総裁の若田部昌澄早大教授の起用を決めた。首相肝いりの日本成長戦略会議の委員には、利上げに慎重なクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストなどを任命。リフレ派の登用が際立った。
今回の同意人事案を巡り、事情を知る関係者の1人は「最終的には首相がどう判断するか」とするが、リフレ派とされる候補者も検討対象になっていること自体は否定していない。
<首相のスタンス見極め>
野口、中川両審議委員の後任人事について、市場は「金融政策に対するスタンスを見極める大きな材料になる」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミスト)と位置付ける。
政策委員会のうち2人がリフレ派となった場合、利上げ判断そのものに直ちに影響しなくても、先行きの不透明感は一段と増す。植田日銀が進める正常化路線の「ブレーキ役」になるとの連想から、インフレ懸念を伴う円安、金利上昇を誘発する可能性がある。
一方、高市政権発足以降の4カ月で「円安への警戒感は格段に上がった」と、別の政府関係者は言う。第2次高市内閣発足に伴う18日の記者会見で、首相は「為替を含めた金融市場の動向について、その動向は常に注視している」と発言しており、最終的には市場に配慮したかたちとすることも予想される。
円安が再び加速すればさらなる物価高を招き、政権の支持率に跳ね返りかねない。「リフレ色を鮮明にすれば市場で副作用が起こる可能性が高まる。高市政権のこれまでの政策運営も当初懸念されたほどリフレ派的なものとなっておらず、必ずしもリフレ派縛りの人選とはならないのではないか」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介シニアエコノミスト)との見方がある。
<穏当でも残る波乱の芽>
仮に、今回は穏当な人事案だったとしても、その先に波乱の芽は残る。
27年7月に任期を迎える高田創、田村直樹両審議委員のほか、28年3月には内田真一、氷見野良三両副総裁が任期満了となる。自民党の歴史的大勝となった先の衆院選を踏まえ、高市氏が長期政権を視野に入れれば、植田和男総裁の任期切れとなる28年4月にかけ、過半の人選に色をつけるチャンスはある。
「今回は市場に配慮するかたちでリフレ派の登用を見送っても、来年から再来年前半にかけての人事でどういう戦略をとってくるかは不透明感が漂う」(ニッセイ基礎研の上野氏)という市場の警戒感は拭えない。
高市氏は首相就任以降、表立って日銀に注文を付けることは減ったが、「景気を冷やすようなことはして欲しくないというのが本音」と、前出とは別の政府関係者は言う。強い経済実現を目指す過程で、日銀に対する態度を硬化させるかどうかも今後、焦点となる。
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