ニュース速報
ビジネス

トランプ米政権、薬価引き下げで国際価格参照制度を検討=関係筋

2025年04月23日(水)13時52分

トランプ米政権が薬価を他の先進国水準に引き下げる検討に着手したことが分かった。他国の薬価と比べ適正水準を探る「国際価格参照制度」と呼ばれる仕組みで、製薬企業関係者2人が当局から事前警告を受けたことを、匿名を条件にロイターに明らかにした。2019年8月撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)

[22日 ロイター] - トランプ米政権が薬価を他の先進国水準に引き下げる検討に着手したことが分かった。他国の薬価と比べ適正水準を探る「国際価格参照制度」と呼ばれる仕組みで、製薬企業関係者2人が当局から事前警告を受けたことを、匿名を条件にロイターに明らかにした。

同関係者2人は、この問題が業界にとって最重要懸念事項となっており、厚生省のメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMMI)が発表する見通しと述べた。

関係者のうち1人は、政府の厚生省高官から直接、そうした薬価政策の導入を検討していると告げられたと明らかにした。薬価引き下げ策をいくつか検討していると話したという。同関係者は、CMMIは国際価格参照制度に基づいた薬価算定の仕組みを試験的に導入するだろうと述べた。

国際価格参照制度の導入は、薬価を引き下げたいトランプ政権の検討策の中では中程度の優先度に位置づけられるという。ただ、「製薬業界と米バイオサイエンスのイノベーションにとって存亡に関わる過去最大の脅威だ」と警戒感を示した。

関係者2人は、輸入医薬品への関税を含む他の政府の政策発動よりも製薬業界には大きな懸念材料だと述べた。

米国では医薬品に対して世界で最も高額な支出がなされており、その額が他の先進国の約3倍に上ることが頻繁にある。トランプ大統領は、こうした価格差を縮小する意欲を表明しているものの、具体的な方法は明らかにしていない。

トランプ大統領は1期目に国際価格参照制度を掲げたが、裁判所によって阻止されたという経緯がある。当時は納税者にとって7年間で850億ドル以上の節約、国内で年間計4000億ドル以上の医薬品支出削減を目指していた。

トランプ氏は2期目の大統領に就任後、同制度の構想を公表していない。ただ、保守系シンクタンクのアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)が制度に言及している。先月発表の論文の中で、高齢者や障害者向け公的医療保険制度メディケア向け薬価交渉の中で導入される可能性があると指摘している。

一方、専門家らは、トランプ政権が対象を限定した導入を提案したとしても実施には困難を伴うとの見方を示している。膨大なマンパワーが必要となる作業だが、担当職員数がそもそも限られている上、ケネディ厚生長官の陣頭指揮で厚生省で大型リストラ計画が進行中のためだ。

また、国内で承認された医薬品は数千種類あり、その一部は他の参照国では保険適用されていないか、まだ販売されていない。さらに、一部の国では薬価確定までに時間がかかるため米国が価格を参照しようにも時間差ができてしまうという。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:米大統領執務室でのドラマ再び、要人は招待

ビジネス

リオ・ティントのスタウショーンCEOが年内退任、後

ワールド

米首都銃撃でイスラエル大使館員2人死亡、親パレスチ

ワールド

景気「緩やかに回復」維持、米関税リスク引き続き注視
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    子育て世帯の年収平均値は、地域によってここまで違う
  • 9
    米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「自動車の生産台数」が多い…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 5
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 9
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中