ニュース速報
ビジネス

焦点:日銀利上げ、円安にらみ政権・与党内で議論百出 なお残る慎重論

2024年07月24日(水)18時32分

 7月24日、日銀の追加利上げを巡り、政権・与党内で議論が百出している。写真は都内の日銀本店で2023年9月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama

[東京 24日 ロイター] - 日銀の追加利上げを巡り、政権・与党内で議論が百出している。現職閣僚に続き、党幹部からも円安への危機感から利上げに前向きと受け止められる言及があった。一方、拙速な利上げになお慎重な声も残り、日銀が30、31日の金融政策決定会合でどう判断するかは、これまで以上に注目の度合いを増している。

<円安で被る痛手>

発端となった17日のブルームバーグとのインタビューによると、河野太郎デジタル担当相は「円の価値を高め、エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日銀に求めた」とされる。

河野担当相は19日に「今、日銀に対して利上げを直接求めているわけではない」と釈明したが、為替市場で円高要因として材料視された。

自民党の茂木敏充幹事長が発した利上げに関する言及も、日銀に対する異例の注文として波紋を呼んだ。時事通信によると、茂木幹事長は22日に都内で講演し、「段階的な利上げの検討も含め、正常化する方向で着実に進める方針をもっと明確に打ち出すことが必要だ」と述べた。

円安への危機感を強める背景には、家計の所得環境改善にブレーキがかかりかねないという懸念がある。円安が続き、コストプッシュ型のインフレが再燃すれば、「好循環実現」をうたう政権にとっても痛手となる。

年初からの円安は、ピーク時の変動率が一時15%を超えた。内閣府の短期日本経済マクロ計量モデルによると、為替が10%円安に振れれば消費者物価が0.2%程度押し上げられるという。

「日銀の物価見通しは実際より0.数%ポイントほど低く出やすい。手遅れになる前に(利上げの)道筋を付けるべきだ」(中堅幹部)との声も、与党内にはある。

<外圧が足かせに>

とはいえ、拙速な利上げには慎重論もくすぶる。

実質国内総生産(GDP)のうち、直近までの個人消費は4四半期連続のマイナスだった。これだけマイナスが続くのはリーマン危機時の2008年4―6月期から09年1―3月期以来で、「消費は力強さを欠いている。利上げを急げばかえって景気を冷やしかねない」と、政府関係者の1人は語る。

好循環のカギを握る価格転嫁ができていない中堅・中小企業も少なくない。「いずれ必要となる利上げに反対するつもりはないが、タイミングは重要」と、別の関係者は言う。

議論が百出する背景には、9月までに行われる党総裁選を控えているという側面もあるが、首相周辺からは「牽強付会に7月(に利上げ)だ、9月だという話にするのはおかしい。そこは日銀自身が判断する話」との声が聞かれる。河野、茂木両氏は、いずれも総裁候補に取りざたされる。

要人発言に先立つ今月初旬には「国債買い入れの減額計画と同時に、利上げを実施するのではないか」(銀行関係者)とみる向きもあった。

ただ、足もとでは「現職閣僚や与党の有力者から露骨に利上げを求められ、仮に7月に利上げすれば従属感が強まる。直後は、逆に動きづらくなる」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミスト)との声が浮上。利上げを促す外圧は、かえって日銀の手足を縛る要因になるとの見方も出ている。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者32人に、子ども14人犠牲 

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中