商業用不動産、ユーロ圏金融システムの弱点=ECB金融安定報告
5月16日、 欧州中央銀行(ECB)は半期に1度の金融安定報告を公表し、商業用不動産がユーロ圏の金融システムの弱点となっており、銀行、保険会社、ファンドに損失が波及する恐れがあるとの見解を示した。フランクフルトのECB本部で2023年3月撮影(2024年 ロイター/Heiko Becker)
[フランクフルト 16日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は16日、半期に1度の金融安定報告を公表し、商業用不動産がユーロ圏の金融システムの弱点となっており、銀行、保険会社、ファンドに損失が波及する恐れがあるとの見解を示した。
商業用不動産業界は、借り入れコスト上昇、新型コロナウイルス流行後のオフィス需要減少、建築資材の高騰という三重苦に見舞われている。
ECBは、商業用不動産業界の問題がデフォルト(債務不履行)率の上昇や投資損失リスクという形で金融システムに波及し始めていると指摘。商業用不動産価格は昨年末時点で前年比8.7%下落しており、さらに値下がり可能性があると述べた。
域内の大手不動産会社の約半数が赤字となっており、利益から利息を支払う能力が大幅に低下しているとの認識も示した。
銀行については、商業用不動産向け融資が融資全体に占める比率は低いものの、「一部の銀行」が特に米国で「商業用不動産ポートフォリオの大幅な悪化」に見舞われていると指摘。
不動産評価額の下落により、銀行が引当金の積み増しを迫られる可能性が高く「場合によっては資本の減少につながり得る」としている。
不動産投資ファンド(REIF)については、不動産価格の大幅な下落にもかかわらず純資産価値が安定しており、損失がまだ計上されていないこと示しているとし「こうした損失がREIFの解約請求につながれば、手元資金が圧迫される」と述べた。
また、保険会社もREIFへの投資で損失を被るリスクがあり、「金融システム内の商業用不動産エクスポージャーの相互関連性を継続的に監視する必要がある」と述べた。