ニュース速報
ビジネス

第1四半期の中国GDPは予想上回る、3月指標は需要低迷を示唆

2024年04月16日(火)15時11分

 4月15日、中国国家統計局が発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.3%増と、市場予想を上回った。写真は朝の通勤時間帯の北京のビジネス街の様子。2月撮影(2024 ロイター/Florence Lo)

Joe Cash Kevin Yao

[北京 16日 ロイター] - 中国国家統計局が16日発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.3%増と、市場予想を上回った。不動産や地方債務の問題が根強く残る中、景気支援策を講じてきた当局にとっては安心材料になりそうだ。

ただ、GDPと同時に発表された鉱工業生産や小売売上高など一連の3月指標は、内需低迷が全体的な経済成長を妨げていることを示した。

ロイターがまとめた市場予想は4.6%増だった。成長率は前期の5.2%から若干加速した。

前期比では1.6%増と、こちらも市場予想の1.4%増を上回った。

中国政府は2024年通年で5%前後の成長率目標を掲げるが、アナリストは野心的な水準とみている。

SMBC(シンガポール)のアジア・マクロ戦略責任者、ジェフ・ング氏は「成長率目標を達成する上でポジティブな内容だ」と指摘。その上で、「センチメントはまだ弱気に傾いていると思う。おそらく第4・四半期から、逆の動きが幾分見られるだろう」と語った。

ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ハリー・マーフィー・クルーズ氏は「第1・四半期の力強い成長率は中国の年間目標である5%前後の達成に大きく貢献する」と指摘。

鉱工業生産も四半期を通じて経済を支援したとしつつ、「3月のデータが弱かったことが懸念材料だ。家計支出の低迷も同様に懸念される」と述べた。

<3月指標は軟調>

不動産不況や地方の債務膨張、民間消費の弱さが足かせとなり、新型コロナウイルス禍後の景気回復はもたついている。今年は好調なスタートを切ったが、3月の輸出、消費者物価、銀行融資の統計は再び失速する可能性を示した。

この日発表された指標も内需低迷が続いていることを示した。

3月の鉱工業生産は前年比4.5%増加し、1─2月の7.0%増から鈍化。ロイターがまとめた市場予想の6.0%増を下回った。

3月の小売売上高は3.1%増。1─2月は5.5%増、市場予想は4.6%増だった。

1─3月の固定資産投資は前年比4.5%増。1─2月は4.2%増、市場予想は4.1%増だった。

RBCキャピタル・マーケッツのアジア通貨戦略責任者、アルビン・タン氏は「表面的にはヘッドラインの数字は良く見えるが実際のところ、勢いはかなり弱いと考える」と述べた。

第1・四半期のGDP統計を受け、ANZのエコノミストは24年の中国成長率予測を従来の4.2%から4.9%に引き上げたが、BBVAは4.8%に据え置いた。

多くの投資家は3月の指標が軟調だったことから、予想を上回ったGDP統計をうのみにしない姿勢を示しているようだ。

<課題>

投資家心理と需要が依然として弱い中、3月の指標は不動産セクターの問題の根深さを浮き彫りにした。

国家統計局データに基づくロイターの算出によると、3月の新築住宅価格は前年比2.2%下落し、15年8月以来の大幅な落ち込みとなった。

3月の不動産投資は前年比16.8%減少。1─2月の9.0%減からマイナス幅が拡大した。不動産販売も23.7%減と、1─2月の20.5%減から減少ペースが加速した。

消費よりも生産に多くの信用が流れ、経済の構造的欠陥が顕在化し金融政策手段の有効性が低下する中、当局は課題に直面していると一部のアナリストは指摘する。

BBVAリサーチのシニアエコノミスト、Jinyue Dong氏は「不動産市場の深い調整と地方政府の債務問題が依然として主要なリスクとなっており、景気回復はまだ強固な基盤を得ていない」とコメント。

「さらに、米大統領選を前にした米中対立を主な要因とする地政学リスクは当面続く見通しだ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、29─30日に訪韓=韓国当局者

ビジネス

日経平均は続伸、政治不安後退で「高市トレード」再開

ビジネス

マクロスコープ:増える苦学生、食費・家賃上昇が生活

ビジネス

TSMC、第3四半期39%増益で過去最高 AI需要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中