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インタビュー:来年4月の「トリプル解除」が基本線、マイナス金利含め=門間元日銀理事

2023年11月22日(水)18時43分

 11月22日、門間一夫・元日銀理事(みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト)は、ロイターのインタビューに応じ、日銀の金融政策について、来年の春闘の集中回答の結果を確認した後の4月にマイナス金利、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)、マネタリーベースの増加方針であるオーバーシュート型コミットメントの3つを同時に解除するのがメインシナリオだと述べた。写真は日銀本店。9月20日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada Leika Kihara

[東京 22日 ロイター] - 門間一夫・元日銀理事(みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト)は22日、ロイターのインタビューに応じ、日銀の金融政策について、来年の春闘の集中回答の結果を確認した後の4月にマイナス金利、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)、マネタリーベースの増加方針であるオーバーシュート型コミットメントの3つを同時に解除するのがメインシナリオだと述べた。政府のデフレ脱却宣言も同じタイミングになるとの見通しを示した。

ただ、日銀が掲げる賃金・物価の好循環の確認は「ハードルが高い」とし、来年4月にトリプル解除が実現する可能性は「五分五分だ」とも話した。

門間氏は、先行き物価上昇率が2%を下回る可能性を残しながらの「グレー」な物価目標の達成になる可能性が高いと述べ、マイナス金利撤廃後、来年中に政策金利を引き上げるとしても0.25%を1回ないしは2回と予想した。日本社会に根付いてきた物価や賃金が上がらないという通念(ノルム)が「十分に変わりきった感じがしない」ことを理由に挙げた。

政府・日銀は2013年の共同声明以降、デフレ脱却に向けて連携してきたことから「基本的に政府と日銀の認識は合っていないといけない」と話した。門間氏は日銀の政策担当理事として共同声明の策定に関わった。

<利上げ後にバランスシート縮小に着手>

門間氏は、10月の金融政策決定会合で日銀が10年金利を1%で厳格にコントロールする手法をやめたことで「YCCはほぼ撤廃されたも同然」と述べた。YCCの撤廃後は、政策金利を無担保コール翌日物金利に戻した上で、長期金利の急騰時には機動的にオペで対応する方針が示されるとの見通しを示した。

オーバーシュート型コミットメントの廃止は「2016年以降、事実上続けてきたテーパリングの終了」と位置づけた。この指針の廃止後、当面はバランスシートの規模を維持するために国債償還後の再投資を継続するものの、「短期金利を多少上げた時点でバランスシートの縮小を始めるのがFRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)の例を見れば最も自然な対応だ」と語った。

<来年の春闘、望ましい賃上げ率は4%>

門間氏は、物価目標達成の観点で来年の春闘の望ましい賃上げ率は定期昇給込みで4%とし、今年の3.58%並みでは「非常に微妙だ」と述べた。

この数字に届かない場合、日銀は緩和を続けながら物価目標の達成時期を模索することになるが、四半世紀にわたる金融緩和政策の多角的なレビューの成果が来年夏に出てくることから、多角的レビューでYCCやマイナス金利の副作用が大きいと総括した上で、日銀はYCCやマイナス金利をやめていくとの見通しを示した。

(和田崇彦、木原麗花)

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