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アングル:米債務上限停止、大統領と下院議長の合意内容

2023年05月29日(月)14時30分

 5月28日、バイデン米大統領は、債務上限を凍結する案について共和党のマッカーシー下院議長と最終合意し、議会での採決に進める用意が整ったと明らかにした。写真はシンガポールで2017年6月撮影(2023年 ロイター/Thomas White)

[ワシントン 28日 ロイター] - バイデン米大統領は28日、債務上限を凍結する案について共和党のマッカーシー下院議長と最終合意し、議会での採決に進める用意が整ったと明らかにした。

合意内容は議会の公式ウェブサイトに公表された。法案の形にまとめられており、今後数日中に上下両院での可決を目指す。

<裁量的支出に上限>

今回の合意では、債務上限(31兆4000億ドル)を2025年1月1日まで停止し、連邦政府が借り入れをできるようにする。

ホワイトハウス当局者によると、条件として「合意済みの歳出予算調整を考慮した」ベースで24年度の国防費を除く裁量的支出を今年度と「ほぼ同水準」とする。

24年度の国防費を除く裁量的支出(退役軍人への給付金を除く)は6370億ドルと、今年度の6380億ドルからわずかに減少する。25年度は1%増となる。  

<債務上限の停止期限は大統領選後>

債務上限の停止は24年末まで続くため、議会は同年11月の大統領選挙が終わるまで、この問題に再び取り組む必要はない。

ただ、今回合意した支出上限の下でどのように資金を配分するかについては、年内に議会で厳しい交渉を進める必要がある。

<国防費は増額>

今回の合意では、バイデン大統領の24年度予算教書に沿って、国防費を総額8860億ドルに増額することになる。今年度の8580億ドルから約3%の増額となる。

<内国歳入庁の予算圧縮>

民主党は昨年成立したインフレ抑制法で、富裕層の徴税を強化するため、内国歳入庁(IRS)向けに10年間で800億ドルの予算を確保したが、今回の合意により、24年度と25年度にそれぞれ100億ドルをIRS以外の予算に振り向ける。ただIRSは10年単位で予算を組んでいるため、バイデン政権は目先IRSの資金が不足することはないとみている。

<新型コロナウイルス対策費>

未使用の新型コロナ対策費の大部分を今回の予算合意の一部として取り崩すことで合意。未使用の資金は500億─700億ドルと推定される。ホワイトハウス当局者によると、ワクチンや先住民向け支援に関する項目など一部資金は維持される。

<就労要件>

低所得者向け食料・医療保険プログラムの就労要件厳格化を巡り、バイデン氏とマッカーシー氏は激しく争った。

合意ではメディケイド(低所得者向け医療保険)について変更を行わない一方、「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」と呼ばれる低所得者向け食料補助制度の受給要件として就労を求める対象年齢を現行の50歳以下から54歳以下に引き上げる。

<学生ローン>

バイデン政権は現在の学生ローン返済一時停止措置を8月下旬までに終了する計画を遂行することが求められる。ただ、4300億ドルの返済免除計画自体の無効化には踏み込んでいない。この計画を巡っては現在、最高裁判所が審理を行っている。

<「PAYGO」>

共和党は、歳入に影響を及ぼす政府機関の新たな措置や支出に当たっては節減によってそれを相殺することを義務付ける「ペイ・アズ・ユー・ゴー(PAYGO)」と呼ばれる仕組みで合意を得た。

ただ、この要件を免除する権限を政権の予算局長に与えているほか、その決定に対する司法審査は制限される。

<エネルギープロジェクト認可>

化石燃料を含むエネルギープロジェクトの認可取得を容易にする新たなルールで合意。マッカーシー氏と共和党議員は認可制度の改革を合意の柱の一つに据え、ホワイトハウスも今月、支持を示していた。

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