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情報BOX:日銀正副総裁人事 有力候補の経歴や政策観

2023年02月03日(金)17時31分

 2月3日、岸田文雄首相は2月中に日銀正副総裁の人事案を国会に提示する見通し。主な有力候補の顔ぶれと政策観は次の通り。写真は昨年6月、日銀本店前で撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 3日 ロイター] - 岸田文雄首相は2月中に日銀正副総裁の人事案を国会に提示する見通し。主な有力候補の顔ぶれと政策観は次の通り。

●雨宮正佳・日銀副総裁

雨宮正佳氏は1955年生まれの67歳。1979年に東京大学経済学部卒、日銀に入行。企画局長、理事を経て18年3月に副総裁に就任した。黒田総裁の下で異次元の金融緩和を支えた。新型コロナウイルス感染拡大を受けた政策対応では政府との連携・協調を主導した。金融緩和政策からの出口戦略について、昨年7月の記者会見では「全然考えていないということではない」と述べ、出口に差し掛かったときの金融政策手段の運用の仕方やコミュニケーション方法は常に検討していると明らかにした。

●中曽宏・前日銀副総裁

中曽宏氏は1953年生まれの69歳。1978年に東京大学経済学部卒、日銀入行。97年の金融危機の際には信用機構課長として対応に当たった。国際関係統括の理事を経て13年3月に副総裁に就任。昨年5月のロイターのインタビューでは、大胆な金融政策・機動的な財政政策・成長戦略からなるアベノミクスについて、経済再生の処方箋としては正しいが「特に第一の矢の金融政策に相当負担がかかった」と指摘。潜在成長力を少しでも引き上げることができれば、賃金が上昇して家計の値上げ許容度が高まり、物価や金利の上昇で「金融政策が正常化できる」と語った。

●山口広秀・元日銀副総裁

山口広秀氏は1951年生まれの71歳。1974年に東京大学経済学部卒、日銀入行。企画局長、理事を経て2008年10月に副総裁に就任し、白川方明元総裁を支えた。副総裁として13年1月の政府・日銀の共同声明策定に関わった。昨年12月のロイターのインタビューでは、共同声明に明記された2%物価目標について「現時点では、変えなければならない必然性はないと思う」と述べ、修正に否定的な見解を示した。

●浅川雅嗣・ADB総裁

浅川雅嗣氏は1958年生まれの65歳。1981年に東京大学経済学部卒、旧大蔵省入省。麻生太郎内閣の首相秘書官を経て、2015年7月に財務官に就任。財務官は歴代最長の4年間務めた。20年1月にアジア開発銀行総裁に就いた。昨年9月のロイターのインタビューでは、米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチな利上げに伴うアジア域内での金融危機リスクに備え、日中韓と東南アジア諸国が集まる「ASEANプラス3」で金融協力強化の議論を加速させる必要があるとの考えを示した。

●岡本薫明・元財務次官

岡本薫明氏は1961年生まれの61歳。83年に東京大学法学部卒、旧大蔵省入省。主計局長を経て2018年に財務次官に就任。次官を2年務め、文書改ざん問題で失墜した財務省の信頼回復に努めるとともに消費税率10%への引き上げを主導した。岡本氏は21年7月に動画配信サイトに掲載された対談の中で「日銀の今の金融政策は、これをスタートさせた時のアコード(政策協定)にあるように、政府が財政健全化の努力を続けることが前提となってやっている」と述べた。

●木下康司・元財務次官

木下康司氏は1957年生まれの65歳。79年に旧大蔵省入省。国際局長、主計局長を経て2013年に財務次官に就任した。昨年10月のロイターのインタビューでは、日銀の大規模な金融緩和が円安の一因とされることについて「いずれ出口を目指す必要がある点は、みんな分かっている」とする一方、出口戦略は慎重に進める必要があると指摘。金利が急上昇した英国の例に触れた上で「これまで以上に財政当局と金融当局が緊密なコミュニケーションを取る必要がある」と語った。

●伊藤隆敏・コロンビア大学教授

伊藤隆敏氏は1950年生まれの72歳。79年にハーバード大学大学院経済研究科博士課程を修了、博士号を取得した。一橋大経済研究所教授、東京大大学院経済学研究科教授を経て2015年1月にコロンビア大学国際関係・公共政策大学院教授に就任した。インフレターゲットの導入論者として知られ、黒田東彦日銀総裁とは旧知の間柄。1月のロイターのインタビューでは、昨年12月の日銀による長期金利の変動幅拡大について「出口への一歩ではないとする(日銀の)説明は苦しい」と指摘。賃上げなどの条件が整えば、今夏にも変動幅を上下0.75%や1%に再拡大する可能性があるとの見方を示した。

    ●氷見野良三・前金融庁長官

氷見野良三氏は1960年生まれの62歳。83年に東京大学法学部卒業、旧大蔵省入省。金融庁金融国際審議官を経て、2020年7月に金融庁長官に就任した。03年からバーゼル銀行監督委員会事務局長を務めるなど、国際金融規制に精通。19年9月から金融安定理事会(FSB)の規制監督常設委員会議長を務めた。昨年5月のリポートでは、コロナ禍での各国中央銀行での政策対応について「流動性危機の沈静化と再発防止のために効果的に機能した」と評価する一方、ノンバンク・セクターの改革が不十分だったことも明らかになったと述べた。

●内田真一・日銀理事

内田真一氏は1962年生まれの60歳。86年3月に東京大法学部を卒業して日銀に入行。新潟支店長を経て2012年5月に企画局長に就任。総裁が白川方明氏から黒田東彦氏に代わり、金融政策が大きく転換した時期に金融政策の企画立案を担った。18年4月に日銀理事。20年5月から企画局を担当した。22年4月には日銀理事に再任された。同年5月、国会で長期金利の変動幅拡大は「事実上の利上げ」と発言、12月の長期金利の変動幅拡大時には「利上げではない」とする黒田総裁の説明との整合性が問われた。

●清水季子・日銀理事

    清水季子氏は1965年生まれの57歳。87年に東京大学工学部を卒業、日銀入行。欧州統括役を務めるなど国際関係に精通し、2020年5月には女性として初めて日銀理事に就いた。名古屋支店長と理事を兼務していた20年7月の記者会見では、米国でのコロナ感染者数急増に警戒感を示しつつ、東海地方の自動車完成車メーカーは米国での販売戦略を工夫しており「しっかり需要は捉えられていると聞いている」と話した。   

    ●翁百合・日本総研理事長

翁百合氏は1984年に慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了後、日銀入行。日本総合研究所に転じ、2018年に理事長に就任した。岸田内閣の新しい資本主義実現会議のメンバーの1人。昨年11月のロイターのインタビューでは、10年間にわたる日銀の大規模緩和は副作用が大きいとして、政府・日銀が結んだ政策協定(アコード)を見直し、2%の物価目標などを柔軟化すべきとの認識を示した。

●白井さゆり・元日銀審議委員

白井さゆり氏は1993年にコロンビア大学大学院・経済学研究科博士課程を修了、経済学博士(Ph.D)。慶応義塾大学総合政策学部の助教授、教授を経て2011年4月から日銀審議委員を務めた。昨年11月のロイターのインタビューでは、景気に影響を与えない「中立金利」は日本の場合「相当低いはずだ」と述べ、次の日銀総裁の下でも低金利政策は続き、大幅な枠組みの変更は見込みにくいとの見方を示した。物価目標については「目標をピンポイントで示すと政策運営が硬直的になるので柔軟性を担保するためにレンジにしたらいいのではないか」と提案した。

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