ニュース速報

ビジネス

焦点:政府と日銀に齟齬か、介入で憶測 いずれ緩和修正の見方も 

2022年09月28日(水)17時37分

 22日の円買い介入を巡り、政府と日銀の間に政策の齟齬(そご)があるのではないかとの憶測が市場関係者の間で広がっている。写真は都内の日銀本店で2016年9月撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日 ロイター] - 22日の円買い介入を巡り、政府と日銀の間に政策の齟齬(そご)があるのではないかとの憶測が市場関係者の間で広がっている。両者とも矛盾はないと否定するが、円安のマイナス影響を懸念する政府に押し切られ、いずれ日銀は緩和政策の修正を迫られるとの見方は根強い。

<証券会社に続々と問い合わせ>

金融政策決定会合後の22日午後、黒田東彦総裁は政策金利を当面引き上げる必要はないと発言し、円相場は1ドル=145円後半まで急落した。金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)も「2、3年は(変更)ない」と表明したことも円売りを誘った。

政府は円買い介入に踏み切ったタイミングを公表していないが、黒田総裁による会見終了後の午後5時ごろとされる。市場から円資金を短期的に吸収する円買い介入と、円の供給を増やす金融緩和は真逆の対応に映った。

「日本政府と日銀の政策は整合性が取れていないのではないか」──。在京の外資系証券関係者は、こうした照会が後を絶たないと明かす。

日銀側も政府側も、政策は整合的だと強調する。26日に大阪市内で会見した黒田総裁は、矛盾しないかと記者から問われ、「そのようには全く考えていない」と否定。財政政策と金融政策は「目的や効果が異なっているからこそポリシーミックスが可能になる」と語った。鈴木俊一財務相も26日の閣議後会見で、「(黒田総裁の)発言の中にも急激な円安に対する強い憂慮の念についての発言があった。(政府・日銀は)共有した認識を持っている」と話した。

政府関係者の1人は、「日銀は物価をターゲットに責任を持ち金融政策を運営し、それに伴う金利差が為替に影響すれば財務省が必要に応じて対応する。互いのすみ分けは出来ている」と解説する。

世界的な商品価格の高騰と円安で消費者物価は3%に迫る勢いながら、政府・日銀内では持続的な物価上昇に懐疑的な見方が強い。「賃金が上がらない中での物価上昇に対し、日銀が金融緩和を続けるのは当然」との声も政府内にはある。

<22日の発言を修正>

それでも、再び為替が円安に振れる中で煙はくすぶる。原材料高を理由に3月に価格を引き上げた日本マクドナルドとミスタードーナツは26日、再値上げを発表した。今回は円安の進展も理由の1つに挙げた。

「円安は経済にとってマイナスである、というのが政府の認識であることを考えると、本音では円安を止めたいと考えているのだろう。一方で日銀が金融緩和を続けているため、円安になりやすい」と、日銀審議員を務めた野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは指摘する。「両者の姿勢は矛盾しているというのが実態だ」と話す。

黒田総裁は26日の大阪市の会見で、円急落の一因となった22日のフォワードガイダンス維持発言を一部修正した。「現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定している」という政策金利のフォワードガイダンスは「コロナ感染症にひもづいたもの」だとし、「必ずしも2―3年という長期(のもの)というわけではない」と語った。自らの退任後の金利政策について言及したことに対し、民間エコノミスト中心に批判がでた後の発言修正だった。

「世界的にインフレが問題になる中で、日銀は総裁の交代時期を迎える」と、日銀の考え方をよく知る関係者は言う。「トップが代わる時期は政策を修正するチャンスとなる可能性がある」

    (木原麗花、山口貴也 取材協力:梶本哲史、竹本能文 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、12月は4.1万人増 予想下回る

ビジネス

米国やG7と連携、冷静・毅然に対応=中国輸出規制で

ビジネス

PEのクアンタム、ルクオイル海外資産に入札 シェブ

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、12月2%に減速 ECB目標と
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 7
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 8
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中