ニュース速報

ビジネス

アングル:テキサス寒波、天然ガス企業や大手銀が「勝ち組」に

2021年05月10日(月)09時33分

 5月6日、米テキサス州を今年2月に異例の寒波が襲い、天然ガスと電力市場が混乱に陥ったことで、天然ガス供給企業やパイプライン運営企業、コモディティーを取引する大手銀行が多額の利益を上げて「勝ち組」となった。2月、同州のサンマルコスで撮影(2021年 ロイター/Mikala Compton)

[6日 ロイター] - 米テキサス州を今年2月に異例の寒波が襲い、天然ガスと電力市場が混乱に陥ったことで、天然ガス供給企業やパイプライン運営企業、コモディティーを取引する大手銀行が多額の利益を上げて「勝ち組」となった。この事実は、ロイターによる20件以上のインタビューと四半期決算によって明らかになった。

2月の寒波では約450万世帯が停電となり、100人以上の死者が出た。暖房需要の高まりによって電力の卸売価格は平時の400倍に跳ね上がり、天然ガス価格は過去最高を記録。電力会社と消費者は法外な支払いを迫られた。

寒波が去った後、この間の利益について語ろうとする企業はほとんどない。他人の苦難に乗じて儲けたと見られたくないからだ。

しかし今、四半期決算によって勝ち組と負け組が明確になりつつある。また、多額の支払いにあえいだ電力会社は、損失を取り戻そうと訴訟を起こしている。

最大の勝ち組は、天然ガスの供給にアクセスできた企業だ。大手石油商社ビトル、天然ガス供給企業のキンダー・モーガン、エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ、エナジー・トランスファー、BPなどがこれに含まれる。

中でもエナジー・トランスファーは四半期決算で、寒波による利益が約24億ドルに上ると予想し、最大の勝者となったようだ。同社はコメントを控えた。

ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、豪マッコーリー・グループなど、コモディティー取引に携わる銀行も利益を上げた。

インタビューと開示資料によると、これらの企業は寒波の間、天然ガスと電力を売って総額数十億ドルの儲けを得たとみられる。ただ、現在進行中の訴訟次第では、こうした利益を回収できずに終わる企業が出てくるかもしれない。

一方の負け組は、油井の坑口や処理基地などの設備が凍って石油や天然ガスを供給できなかったエネルギー企業だ。1週間の生産停止により、シェールオイル生産企業のパイオニア・ナチュラル・リソーシズは8000万ドル、シェブロンは3億ドル、エクソン・モービルは8億ドルの損失を被った。

電力会社は便乗値上げや不当な供給キャンセルがあったと不満を訴えている。連邦エネルギー規制委員会は現在、天然ガスと電力の市場操作がなかったかを検証中だ。

ゴールドマンとビトルはコメントを控えた。BofAからはコメント要請への返信がない。

<跳ね上がった天然ガス価格>

ヒューストンからタルサ(オクラホマ州)に至る流通拠点で、天然ガス価格は2月初めに100万BTU(英国熱量単位)当たり2.50―3ドルで推移していた。 

しかし、政府のデータによると、2月11日には数百ドル水準に上昇し始め、17日にはタルサで過去最高の1192.86ドルを付けた。

商品先物取引委員会(CFTC)のエネルギー環境諮問委員会メンバー、タイソン・スロカム氏は「天然ガス市場を20年間見てきたが、こんな価格の高騰を目にしたのは初めてだ」と語る。

<勝ち組と負け組>

豪マッコーリーは、寒波前後の取引によって年間の利益見通しが約10%押し上げられたと説明した。複数の社内筋によると、同行のトレーダーは過去の寒波によるインフラへの影響を調査し、取引の計画を練った。同行は本記事へのコメントを控えた。

一方、法廷書類によると、取引で利益を上げたゴールドマンやBofAなどの企業の多くは、寒波の影響で経営破綻した電力会社や電力協同組合への投資では損失を出す見通しだ。

関係筋によると、BofAの場合、トレーディング部門で数億ドルの利益を出した一方で、経営破綻した電力小売業者、ブラゾス電力協同組合に対して約4億8000万ドルの債権を有している。ブラゾスは連邦破産法11条を申請した。

一部のエネルギー供給企業は、テキサスの寒波が不可抗力事由であり、契約不履行は許されると訴えている。マッコーリーはエクソンに対し、天然ガスの受け渡し不履行による損害1100万ドルを賠償するよう求めているが、エクソンはこれを不当として訴訟を起こした。

CPSエナジーはBP、シェブロン、エナジー・トランスファーなどを便乗値上げで提訴した。

テキサスの複数の風力発電企業は、JPモルガン・チェースとシティグループのトレーディング部門を相手取り、テキサスの寒波は極端な事由であり、発電・電力供給契約は無効化されると訴えた。

(記者:Devika Krishna Kumar、Scott DiSavino、Jessica Resnick-Ault)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、インドの原油購入停止「承知せず」 米印合意

ワールド

ロシア、ウクライナのエネ施設に集中攻撃 新たな3カ

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 8
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 9
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中