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政府と連携し企業金融支援、必要なら制度拡充や金利変更=日銀総裁
5月26日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は、参院財政金融委員会で半期報告を行い、政府と連携して企業金融を積極的に支援していくと説明した。写真は2019年12月、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 26日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は26日、参院財政金融委員会で半期報告を行い、政府と連携して企業金融を積極的に支援していくと説明した。その上で、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要なら躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を実施すると改めて述べた。
日銀が打ち出した金融機関向けの新たな資金供給手段について、黒田総裁は民間金融機関の融資が焦げ付いても日銀が貸し倒れをそのまま引き受けることは「ハードルが高い」と説明。必要であれば、制度の拡充やイールドカーブ・コントロール(YCC)の金利引き下げなどで対応すると述べた。
日銀の新たな資金供給手段は、政府の緊急経済対策に盛り込まれた民間金融機関による無利子・無担保融資を促進することが狙い。企業に貸し出す保証付きの無利子・無担保融資や条件面でこれに準じるプロパー融資(銀行が独自に行う信用保証協会を介しない融資)を資金供給の対象とし、実績に応じた額に日銀はプラス0.1%の付利を行う。黒田総裁は、保有国債の利息収入や上場投資信託(ETF)の運用益が付利の原資になると説明した。
黒田総裁は、民間金融機関による融資が焦げ付いた場合、保証付きであれば金融機関に信用保証協会が肩代わりする一方、プロパー融資の場合でも、金融機関の保有資産や日銀に預けた共通担保で吸収可能との見方を示し、「金融機関から中小企業への融資が回収不能となっても、日銀の金融機関への貸し付けに直接的な影響はない」と述べた。
また、幅広い資金繰り支援を打ち出している欧米の中央銀行でも、貸し倒れを中銀が受け入れることにはなっていないと説明。「(日銀の金融機関向け)債権放棄のハードルは高い」とし、「必要なら特別プログラムの拡充やYCCの金利を見直すといった措置も考えられる」と述べた。
<長短金利目標、現状は「適正水準」>
日銀の追加対策については、特別プログラム拡充、長短金利の引き下げ、資産購入増のほかに「新たな方策が必要になるかもしれない」とも語った。
マイナス0.1%としているマイナス金利、ゼロ%の長期金利目標は「現時点で、経済・金融にとって適切な水準」と指摘。長期金利は、中長期的な財政健全化への信認を背景に「YCCによって、国債増発にもかかわらずゼロ%程度に維持されている」との見方を示した。
一方、景気の先行きには「(新型コロナウイルス)感染症の終息後、人々の行動が元に戻るのは難しい」と慎重な見通しを示した。個人的な見解と前置きした上で「4―6月期実質国内総生産(GDP)は、1―3月期よりマイナス幅が大きくなる可能性が高い」と述べた。
<コロナ長期化なら金融システムに影響も>
金融機関の健全性について、黒田総裁は「地域金融機関を含めて、(日本の金融機関は)資本・流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えている」と説明。ただ「感染症拡大の影響が想定以上に長引いた場合には、信用コストが増加するなど金融システムの安定に影響を及ぼすリスクがあり、注意が必要だ」と指摘した。
金融庁とも連携して、日本の金融機関によるクロスボーダー融資なども注視していく方針を示した。
*内容を追加しました。
(和田崇彦 編集:青山敦子、田中志保)