ニュース速報

ビジネス

世界成長率見通し、20年3.3%に下方修正 印など新興国低調=IMF

2020年01月21日(火)00時06分

国際通貨基金(IMF)は20日に発表した世界経済見通し(WEO)で、2020年の成長率を3.3%とし、昨年10月時点の予測から0.1%ポイント下方修正した。写真は会見するゲオルギエバIMF専務理事(2020年 ロイター/DENIS BALIBOUSE)

[ワシントン/ダボス(スイス) 20日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は20日に発表した世界経済見通し(WEO)で、2020年の成長率を3.3%とし、昨年10月時点の予測から0.1%ポイント下方修正した。インドを含む新興国の経済が予想より大きく減速すると予測されることが背景。ただ、米中が通商交渉で「第1段階」の合意に達したことで貿易、および製造業活動が近く底入れする兆しが改めて示されたとした。

19年の成長率は2.9%になったとし、0.1%ポイント下方修正。21年は3.4%とし、0.2%ポイント引き下げた。

下方修正はインドを含む多くの主要新興国について経済見通しを再評価したことが背景と説明。こうした国では、信用収縮のほかノンバンク部門の圧迫により、内需が予想より大きく減退したとしている。

このほか、チリについては政情不安、メキシコについては投資が引き続き弱体化していることを理由に成長率見通しを引き下げた。

一方、米中が今月15日に貿易交渉を巡る第1段階の合意に署名したことで市場心理が改善したと指摘。「こうした安定化に向けた初期の兆候は根付き、最終的には堅調さが継続している消費支出と改善された企業投資との間の連携の強化につながる可能性がある」とした。ただ「世界的なマクロ経済データでは、転換点の兆しはまだほとんど見られていない」と慎重な見方も示した。

ゲオルギエバ専務理事は世界経済フォーラム(WEF)出席のために訪れているダボスで行った記者会見で、「まだ転換点には達していない」とし、「今年は年明け早々、中東で緊張の高まりが見られたほか、豪州やアフリカの一部は気候変動による劇的な衝撃を受けた」と指摘。世界的な経済成長は底入れした可能性があるものの、回復の兆しはまだ見られず、通商問題から気候変動問題に至るまで数多くのリスクが存在していることで見通しの不確実性は高いとの認識を示した。

国・地域別では、中国の20年の成長率は6.0%とし、前回見通しから0.2%ポイント上方修正。米国が発動予定だった一部関税措置を取り下げたことなどを理由に挙げた。

ただ米国については、17年の減税措置の影響が薄れていることに加え、連邦準備理事会(FRB)の緩和策を背景に、20年の成長率は2.0%になるとし、前回見通しから0.1%ポイント下方修正した。

ユーロ圏は1.3%になるとし、前回見通しから0.1%ポイント下方修正。ドイツ製造業の停滞のほか、スペインの内需低迷が重しになるとした。

英国については欧州連合(EU)離脱が秩序立ったものになるとの見方から、20年は1.4%、21年は1.5%で安定化するとの見方を示した。

インドは5.8%とし、前回見通しから1.2%ポイント下方修正した。国内の信用収縮が要因で、今回の世界経済見通しでは新興国としては最大の下方修正となった。21年には財政刺激策の効果で6.5%に戻すとの見方を示したが、前回見通しからは0.9%ポイントの下方修正となる。

IMFはチリなど他の新興国も下方修正。メキシコについては1.0%になるとし、前回見通しから0.3%ポイント引き下げた。

IMFは米中の第1段階の合意でリスクは後退したとしながらも、「米・イラン問題を含む地政学的な緊張の高まりが世界的な原油供給の阻害や心理の悪化につながり、企業投資が弱体化する可能性がある」とし、多くの国で社会不安が高まっていることで経済活動が阻害され、成長率が予想よりも低くなる可能性があると警告した。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中