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アングル:メキシコとブラジル、大統領選控え市場乱高下も
4月10日、中南米の経済大国メキシコとブラジルは、それぞれ7月と10月に大統領選が予定されている。写真はメキシコのオブラドール候補。メキシコシティで9日撮影(2018年 ロイター/Ginnette Riquelme)
[ロンドン/ニューヨーク 10日 ロイター] - 中南米の経済大国メキシコとブラジルは、それぞれ7月と10月に大統領選が予定されている。メキシコでは改革否定が懸念される左派候補が優勢となっている一方、ブラジルは本命不在の混沌とした状況で、いずれも今後の展開次第で金融市場が乱高下する可能性がある。
両国とも政界の汚職事件を受けて大量の有権者が既存の支持政党に見切りをつけ、大衆迎合的主張の候補になびいている。一方、両国の債券相場は世界的な景気回復や投資家の高利回り志向を背景に高値圏にあり、状況の変化に揺さぶられやすくなっている。
メキシコは急進左派のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏が選挙戦で首位に立ち、市場心理に重しになっている。エネルギー市場開放をの取り消しや、福祉予算を拡大するのではないかと投資家が考えているためだ。ただ市場では、ロペス・オブラドール氏は想定したよりも市場寄りに軌道修正を図るのではないかとの声も出ている。
ニッコウ・アセット・マネジメント(ロンドン)のポートフォリオマネジャー、ラファエル・マレシャル氏は「主張は軟化せざるを得ないだろう。選挙で勝ちたいのなら中道寄りに変更する必要がある。市場はメキシコに対して悲観的になりすぎており、ロペス・オブラドール氏が勝利した場合に予想外に市場寄りの動きが起きるかもしれない」と話す。
ロペス・オブラドール氏は今月初めに投資家に公開書簡を送り、同氏がメキシコ経済を悪化させるのではないかとの不安の沈静化に努めるとともに、財政赤字を抑えると約束した。
これに対してコロンビア・スレッドニードルのシニア金利・通貨アナリスト、エド・アルフサイニ氏は、メキシコは国営企業による独占体制に終止符を打ったエネルギー改革や財政ルールを撤回するのは難しいとしながらも、投資家が意表を突かれる可能性は残ると指摘。通貨ペソやペソ建て債務が売り込まれるリスクがあると警戒感を示した。
今のところ資産価格ではメキシコがブラジルをアンダーパフォームしている。メキシコの外貨建て債の対米国債スプレッドは、ソブリン格付けの低いブラジルより大きい。
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉も懸念材料で、主要株価指数は年初来で2%近く下落したが、ブラジルは10%上昇している。
ただボントベル・アセット・マネジメントの新興市場債ヘッドのLuc D'Hooge氏は「市場は読み誤っており、メキシコの資産価格上昇に乗り遅れることが現在のリスクだ」と述べた。
ブラジルは大統領選の行方が非常に不透明だ。世論調査で最も支持率が高かったのはルラ元大統領だが、控訴裁判所がルラ氏を有罪とする一審判断を支持する判決を下し、同氏は政治生命が絶たれる見通しとなってしまった。
ボントベル・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャーのシエリー・ラロース氏は「今後起きる事態は予測の域を超えている」と述べた。
足元では、だれが当選しても重要視されている年金改革は実行されるとの楽観論が広がっているが、それは市場の自己満足だと戒める声も一部に聞かれる。
ブラジル中央銀行によると、今年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比は6.2%に達する見通し。放漫な年金制度などが原因で、ボントベルのD'Hooge氏は「時限爆弾だ」と話す。
ルラ氏に代わり誰が有力候補に躍り出るのかを予想するのは難しく、同氏が後継を指名する力は限られるだろう。一方、市場寄りの主張を掲げる候補は選挙戦で出遅れている。
NNインベストメント・パートナーズのシニアストラテジスト、マーテンヤン・バックム氏は「今のところ強く興味を引かれる候補はいない。勝利の可能性のある候補は明らかに改革派ではなく、この点が不確実な要素だ」と述べた。
(Claire Milhench記者、Rodrigo Campos記者)