ニュース速報

ビジネス

インタビュー:地方貸出業務見直し、地銀と協力関係=みずほ銀頭取

2017年04月25日(火)00時23分

 4月25日、みずほ銀行頭取に就任した藤原弘治氏が、ロイターのインタビューに応じた。写真は都内で19日撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 25日 ロイター] - みずほフィナンシャルグループ<8411.T>傘下のみずほ銀行頭取に就任した藤原弘治氏は、ロイターとのインタビューで、地方で住宅ローンに代表される貸出業務の見直しを進め、地域金融機関と協力関係を築く方針を示した。

地方でシンジケートローンや信託、証券などの手数料ビジネスを拡大するために、地方支店が担う機能の再構築も図る。

また、国際金融規制や国内でのマイナス金利政策を踏まえ、バランスシートを拡大させずに、既存の貸出資産をより収益性の高い資産に入れ替えることで利益を確保していくと語った。中小・個人や、大企業、海外などの顧客別に導入したカンパニー制によって、グループ全体での手数料ビジネス強化を進める。

4月1日付で同行トップに立った藤原氏は旧第一勧業銀行出身。主に企画畑を歩み、昨年度から銀行、信託、証券などの各事業会社横断で導入したメガグループ初のカンパニー制の制度設計を手掛けた。

主なやり取りは、以下の通り。

――メガ初のカンパニー制導入。頭取の使命は何か。

「カンパニー制は、あくまで手段であって目的ではない。みずほグループとして顧客のベストパートナーになれるかどうかが重要だ。地政学リスクや国内の少子高齢化など、取引先が抱える課題に対して、もはや銀行の機能だけでは解決できない。銀行や信託、証券に加えて、資産運用、調査やコンサルティングなどグループの幅を広げており、カンパニー制で一体的に束ねた」

「各カンパニー長が戦略を作り、(傘下の銀行頭取や証券社長などの)エンティティ(会社)長が戦略を実行する。ただ、カンパニー長は現場のことを知らずに戦略を作れない。従って、銀行頭取として現場の声や、顧客が求めているものを踏まえて戦略策定に関与する。顧客は、誰が戦略を作っているかなど関係ない。大事なのは、顧客の付加価値の増加につながっているかどうかだ。この道しかないし、正しいと思っている」

――欧米の巨大金融機関のカンパニー制を見てみると、エンティティ長は形だけだ。みずほもそうなるのか。

「中長期的にはそうだと思う。ただ、日米欧の法制度や商慣習は異なる。顧客の見方も違う。当面の間、会社法や銀行法などの建て付けの中で、責任を持って実行に移すのがエンティティだ。顧客や地域の接点を担うのは現場であり、これは相当に重い。自らカンパニー制を設計した時、銀行の論理ではなく、顧客から見たらどうなんだということにこだわってきた。頭取として目指すのは部分最適ではなく、全体最適だ。銀行だけが儲かってもだめだ」

――バランスシート(BS)の規模は、拡大させていく方向か。

「そろそろ適正な規模に近づいていると考えている。大きく減らすことも、大きく増やすことも必要ない。ただ、中身についてはもっと研ぎ澄ませて、筋肉質にする必要がある。バーゼル規制を念頭に置きながら、次の次元のアセット・ライアビリティ・マネジメント(資産・負債総合管理)が重要なテーマとなる。一段と目線を上げていかなければならない」

「マイナス金利環境下で、BSを使った金利収支で儲けようとは考えてない。資産をBSに残すのではなく資産回転型ビジネスをさらに進める。シンジケート・ローンや、貸出資産の売却、証券化による間接金融から直接金融への切り替えなど、ビジネスを倍にしてもBSは膨らませない手法はたくさんある。海外のセカンダリー・マーケットは肥沃で、懐も深い。17年度は、これまでよりも一段とBSの入れ替えが進むと考えている」

――地方の住宅ローンなどの貸出ビジネスはどうするつもりか。

「われわれが果たすべき役割は、地域金融機関とは別物だと思っている。地域金融機関が主軸に置いている住宅ローンなどの伝統的な貸出業務に、我々が踏み込んでいって競争するつもりはない。地域金融機関とのすみ分け、協力関係というのが1つのキーワードだ。すでにOEM供給のようなかたちで信託商品を地方銀行に提供しているスキームがある。こうした取り組みを広げていきたい」

「信託機能や証券機能、海外ビジネスを取引先につなぐことなど、メガバンクとして地方においてどのような存在感を発揮するかを考える必要がある。地方空港などのインフラファイナンスなどノウハウが必要な業務は、地方においてもメガが地域金融機関と一緒にリードしてやらないといけない。地方支店も、信託や証券、海外ビジネスに重点を置いた店舗に変わっていく」

――M&A(買収・合併)に対する考えは。

「フィンテック、デジタルテクノロジーの時代に、買収戦略はもう1回再評価すべきだ。従来のように規模の利益や、範囲の利益をリアルの世界で追っていくことが本当に正しい戦略なのかどうか。フィンテックが銀行のビジネスモデルの変革を迫ると言われるが、むしろ、経営者のメンタルモデルの変革が迫られている。これまでと同じ発想で金融ビジネスに向き合っていたらダメだ。メンタルを変えて、非連続的なゴールに向かうことがとても重要になっていると考えている」

このインタビューは4月19日に実施しました。

(布施太郎 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げの必要性でコンセンサス高まる=伊中銀

ビジネス

G7、ロシア凍結資産活用は首脳会議で判断 中国の過

ワールド

アングル:熱波から命を守る「最高酷暑責任者」、世界

ワールド

アングル:ロシア人数万人がトルコ脱出、背景に政策見
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシア装甲車2台...同時に地雷を踏んだ瞬間をウクライナが公開

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 7

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 10

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中