ニュース速報

ビジネス

アングル:8月米雇用統計に上方改定の傾向、利上げ判断厄介に

2015年09月03日(木)16時12分

 9月2日、米FRBは9月に利上げを開始するかどうかの判断で8月雇用統計を重視する構えだが、同月の統計は過去10年間、ほぼ毎回速報値から上方改定されており、見極めが難しくなりそうだ。ワシントンのFRB本部、1日撮影(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 2日 ロイター] - 8月の米雇用統計は過去10年間、ほぼ毎回速報値から上方改定されている。米連邦準備理事会(FRB)は9月に利上げを開始するかどうかの判断で8月統計を重視する構えだが、見極めが難しくなりそうだ。

FRBは7月、利上げには雇用市場の「もう一段の」改善が必要だとの認識を示した。4日発表の8月統計は9月16─17日の連邦公開市場委員会(FOMC)前に発表される最後の雇用統計となる。

しかし、雇用主による質問票の提出が遅れたり、当局が季節要因を再推計したりする関係で、雇用統計も他の経済指標と同様に後の改定を免れない。

ロイターの分析によると、2005年から14年にかけて、8月の雇用統計速報はその後2カ月間に発表される改定値との比較で見て、最も低く出ていたことが分かった。非農業部門就業者数は平均5万8000人上方改定されており、下方改定されたのは05年と08年の2回にとどまった。

ロイター調査によると、4日発表の8月の就業者数は市場予想が22万人増で、ここ数カ月の実績とほぼ同じ増加幅になると予想されている。これを大幅に下回れば、9月利上げ観測は急速に後退するだろう。

ウニクレディト(ニューヨーク)のエコノミスト、ハーム・バンドホルツ氏は「8月分が予想を下回る可能性は、上回る可能性よりずっと大きそうだ」と言う。

労働省も8月統計が上方改定される傾向にあることを認めている。

雇用統計の発表元である労働統計局(BLS)のエコノミスト、ジョン・マリンズ氏は電子メールで、さまざまな産業分野で改定が見られるが、季節変動の激しいセクターでの改定が最も多いと説明した。

当局にとって一番の問題は、季節要因が常に変化することだ。マリンズ氏によると、教育セクターの季節調整は「多くの学校が秋の始業日を変えることで季節性が移動するため、8月は特に厄介だ」という。

マリンズ氏は8月分が上方改定される傾向にある理由については言及しなかった。

先の景気後退以来、8月以外の月についても上方改定の傾向が強まっている。

2007─09年の景気後退を経て労働市場が持ち直し始めた2010年以来、4月と6月を除くすべての月で平均すると上方改定が行われてきた。

対照的に景気後退期には、ほぼすべての月で平均すると下方改定が見られた。

景気循環が改定の方向性に影響する理由は不明だが、8月は景気後退期とその後の時期を通じて、おおむね上方改定が行われる数少ない月の一つとなっている。

(Jason Lange記者)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国が対ロ「地下ルート」貿易決済、制裁逃れで苦肉の

ビジネス

米パラマウント、バキッシュCEO退任 部門トップ3

ワールド

中国4月PMI、製造業・非製造業ともに拡大ペース鈍

ビジネス

米金利オプション市場、FRB利上げの可能性上昇を示
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中