ニュース速報

ビジネス

アングル:デジタル時代に乗り遅れた独大手企業、新興投資で挽回へ

2015年03月31日(火)13時45分

 3月30日、デジタル時代に乗り遅れたドイツの大手企業が、新興企業と手を組むことで保守的な企業文化に新風を吹き込み、米国などの巨大インターネット企業に追いつこうと行動を起こし始めている。写真は独ヴッパータールのバイエル関連企業。昨年2月撮影(2015年 ロイター/INA FASSBENDER)

[デュッセルドルフ 30日 ロイター] - デジタル時代に乗り遅れたドイツの大手企業が、新興企業と手を組むことで保守的な企業文化に新風を吹き込み、米国などの巨大インターネット企業に追いつこうと行動を起こし始めている。

独優良株指数DAXを構成する企業の半分超は、創業が19世紀かそれ以前にさかのぼる。最も若いソフトウエア大手SAPでやっと43年前だ。

対照的に、米ナスダック指数を構成する上位30社の約半分は1980年代以降に創設され、規模第4位のフェイスブックに至っては誕生から約10年しか経ていない。

ドイツ政府高官や企業幹部は、米グーグルやアップル、アマゾン・ドット・コムを成功に導いたネットやスマートフォンの技術革新を素早く取り込まなければ、時代から取り残されるとの危機感を抱いている。

このため小売りのメトロや製薬・化学のバイエル、化学のエボニック、通信のドイツ・テレコムなどの各社は今、新興企業に投資している。デジタル技術を獲得すると同時に、これら企業の技術革新が自社の事業を脅かさないよう、抱え込んでしまう狙いだ。

こうした傾向は、ドイツの技術革新を阻んできたベンチャーキャピタル不足の対策にもなるかもしれない。同国でのベンチャー投資は昨年、2倍以上に増えて17億4000万ドルとなったが、トムソン・ロイターのデータによると米国は493億9000万ドルで、遠く及ばない。

メトロのオラフ・コッホ最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、「欠けているのは、我が社のような企業が他企業の成長を助けるために資源を解放する姿勢だ。われわれは小さな企業をビッグにできる」と述べた。

<社内ベンチャーファンド>

メトロは自社の事業経験や営業人員を新興企業に提供するプログラムを立ち上げ、10社を選定する計画を立てている。

バイエル、メルク、ドイツ・テレコム、エボニックなどの社はいずれも、数百億ユーロ規模の社内ベンチャーファンドを設置した。ドイツ・テレコムの場合、今後5年間で5億ユーロ(5億4200万ドル)を独新興企業に投資する計画だ。

アクセンチュアの調査によると、ドイツの大手企業500社のうち、包括的なデジタル戦略を備える社は半分に満たない。その上、欧州連合(EU)欧州委員会が2月末に公表した「デジタル経済指数」によると、ソーシャルメディアを活用している割合はわずか11%、クラウドコンピューティングは6%にとどまっている。

<リスクテーク>

ドイツ政府は大規模な技術革新を促進しようと、新興企業を支援する計画を発表した。これには投資家と若い企業をつなぐネット上のプラットフォームなどが含まれる。

しかし批判派は物足りなさを感じている。バイエルのマライン・デッカーズCEOは先月「ドイツにおけるベンチャーキャピタル投資を容易にし、何よりもまず税制面で魅力的にする必要がある」と述べた。

メルケル首相は、ドイツに根を下ろした失敗を恐れる心理がより大きな障害だと見ている。

首相は週1回のポッドキャストで今月、「新興企業に投資する文化、つまりリスクを取り、10に1つのプロジェクトしか成功しないという事実を向き合える文化は、おそらく米国の方が顕著であり、韓国に比べてさえドイツは弱いかもしれない」と述べた。

(Caroline Copley記者)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ベン&ジェリーズ共同創業者が退任、親会社ユニリーバ

ビジネス

NXHD、通期業績予想を再び下方修正 日通の希望退

ワールド

訪日外国人、16.9%増で8月として初の300万人

ビジネス

英CPI、8月は前年比+3.8% 主要先進国で最高
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中