ニュース速報

米6月雇用統計22.4万人増、賃金上昇緩やか 7月利下げ既定路線か

2019年07月06日(土)05時51分

[ニューヨーク/ワシントン 5日 ロイター] - 米労働省が5日発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが大幅に回復したが、賃金上昇率は緩やかだった。急速な経済減速を示す指標が相次いでおり、今月の利下げは依然として既定路線とみられている。

非農業部門の雇用者数は22万4000人増と5カ月ぶりの大幅な伸びで、ロイターがまとめたエコノミスト予想の16万人増を上回った。4月と5月を合わせた雇用者数は従来から1万1000人下方改定された。

米連邦準備理事会(FRB)は先月、緩慢な物価のほか米中貿易摩擦による経済へのリスクが高まっているとし、早ければ今月30─31日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを示唆したばかり。堅調な雇用統計を受け、FRBは微妙な舵取りを迫られそうだ。

トリプルアイ・キャピタル マネジメントの主任エコノミスト、カリム・バスタ氏は「FRBはやや身動きが取れなくなっている。雇用統計は一見したところ早期利下げの根拠とはならないが、市場はすでに利下げを想定しており、現時点で市場の期待を裏切ることはリスクになると思う」と述べた。

雇用統計を受け、短期金利先物は下落。相場が織り込む今月の0.5%利下げの確率はおおむね消滅する一方、0.25%利下げは引き続きほぼ確実とみられている。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの投資ストラテジスト、ルーク・バーソロミュー氏は「雇用統計は良好だったが、それでも7月の利下げは依然不可欠だ。各種経済指標は全般的に強弱まちまちで、雇用の力強い伸びはその一角に過ぎない。FRBがもし利下げしないのなら市場はひっくり返るだろう」とした。

BNPパリバ証券(ニューヨーク)の米国担当エコノミスト、アンドリュー・シュナイダー氏は「貿易を巡る不透明感が強まり、企業の業況感も着実に低下している状況を踏まえれば、FRBは確実に0.25%利下げをしてくるだろう。これは保険をかけるという意味であり、景気後退に先立って行うものである。したがって雇用が落ち込んでから利下げするのでは遅すぎる」と指摘した。

上半期の就業者数は平均で月に17万2000人増だった。2018年の月間平均である22万3000人増から減速した。ただ労働年齢人口の伸びを維持するのに必要な約10万人をなお上回っている。

景気拡大は過去最高期間となる10年に達したが、ペースは減速している。昨年の大規模な減税や財政出動の効果が薄れている。アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によると、第2・四半期の米国内総生産(GDP)伸び率見通しは年率1.3%。第1・四半期GDPは3.1%増だった。

賃金は10年ぶりの大幅な伸びとなった昨年末から鈍化しており、物価上昇圧力が緩やかになっていることを示す。時間当たり賃金は前月比0.2%(6セント)増。前月は0.3%増加していた。前年同月比では2カ月連続で3.1%増だった。平均週間労働時間は3カ月連続で34.4時間だった。

労働参加率(生産年齢人口に占める働く意志を表明している人の割合)は62.9%と、前月から0.1%ポイント上昇した。

労働市場に参入する人が増える中、失業率は0.1%ポイント上昇し、3.7%となった。最近見られた失業率低下の一因は、市場から抜ける労働者がいたためだ。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.2%と、前月の7.1%から上昇した。雇用主が適切な人材を見つけられないことも雇用鈍化の一因となっている。求人件数は約740万件だった。

6月はほぼ全ての部門で雇用が伸びた。製造業は1万7000人増。自動車産業を中心に在庫の積み上がりが重しとなっているにもかかわらず雇用が増えた。貿易摩擦のほか、米航空機大手ボーイングの旅客機を巡る問題なども製造業の重しだ。

小売業は5800人減と5カ月連続で減少。前月は7300人減少していた。

建設業は2万1000人増。前月は5000人増だった。政府部門は3万3000人増。前月は1万1000人減だった。娯楽・宿泊は8000人増。専門職・企業サービスは5万1000人増。ヘルスケアや運輸・倉庫も増加した。政府部門は3万3000人増えた。

トランプ大統領は5日、雇用の力強い伸びは米経済が引き続きかなり良好に推移していることの表れとした上で、FRBが利下げすれば経済は「ロケット」のように急成長を遂げるだろうと述べ、FRBに重ねて利下げを要求した。

トランプ氏と中国の習近平国家主席は先週、首脳会談を開き、追加関税の先送りと通商交渉の再開で合意した。トランプ氏は3日、中国との妥結は「急がない」と表明。また中国と欧州が「為替操縦ゲームを派手に楽しんでおり、米国と張り合うために金融システムにお金をつぎ込んでいる」と批判した。貿易摩擦によって景況感が悪化しており、設備投資や製造業の重しになっている。

FRBは5日、半期ごとに議会に提出する金融政策報告書を公表した。今年前半の米経済は引き続き「底堅いペース」で推移する一方、関税引き上げが世界貿易や企業投資を圧迫し、最近の数カ月間で経済が弱まったもようとの認識を示した。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中