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政策金利の指針「強めた」、「当分の間」はかなり長い期間=日銀総裁

2019年04月25日(木)18時40分

[東京 25日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は25日、金融政策決定会合後の記者会見で、政策金利のフォワードガイダンス明確化について、「当分の間」がかなり長い期間であることを明示したと述べた。総裁は、2020年春までの政策金利の引き上げを否定するとともに、「極めて低い長短金利水準」が2020年春よりも長くなる可能性に繰り返し言及。今回のフォワードガイダンス変更は「踏み込んで強めたのは事実」と述べた。

黒田総裁は、フォワードガイダンスの修正について「強力な金融緩和継続への信認を高め、金融市場の安定につながる」と述べた。

変更理由について、総裁は、消費税率引き上げが予定されている10月が近付くにつれて、ガイダンスが想定している「当分の間」という時間軸が短く見られる懸念があったと指摘。さらに、世界経済の不確実性が大きな焦点になってきたことも踏まえ、「『当分の間』がかなり長い期間であることを明示した。『少なくとも』と言っており、2020年春よりももっともっと長くなる可能性もある」と述べた。

さらに総裁は、年後半に回復するとしている世界経済にも不確実性が残っているとし、「少なくとも2020年春ごろまでは、金利を引き上げるような検討は全くないし、それより先でも、かなり長い期間にわたって現在の極めて低い長短金利を継続するということ」と説明。「2020年春になったら何が何でも金利を見直すということは全く考えていない」と繰り返した。

フォワードガイダンスは「海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」に変更された。消費税率引き上げに加えて、海外経済にも不確実性があるとして言及したほか、「当分の間」は少なくとも2020年春ごろまでであることを明確化した。

今後もフォワードガイダンスで具体的な時期を示していくかどうかについて、総裁は「基本的な考え方はステート・コンティンジェント(経済・物価情勢に応じて)でデータ・ディペンデント。フォワードガイダンスを変えるかどうかとか、変える場合どうなるかは、その時点での判断」とした。

導入検討を決めたETF(上場投資信託)の貸付制度について、総裁は「市場関係者から要望があることは事実」としたうえで、「ETFの市場がよりよく機能することを期待している。それを通じて、市場全体のリスクプレミアムを圧縮して、それが経済全体・物価にも良い影響を及ぼすことを期待している」と述べた。

「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」において、新たに示した2021年度の物価見通しは1.6%上昇となった。総裁は「21年度中に2%に絶対にならないとも言えないが、おおむね、21年度に2%に達する可能性は低い。2%に達するのは、展望期間の先になりそうだ」と述べた。

消費税率引き上げの判断については「政府・国会の責任において行われるもの」として、コメントを控えた。

春にかけて食品の値上げが相次いだが、総裁は「雇用者所得が増える下で物価が徐々に上がることは消費の減退につながるとは思っていない」とし、「現時点で食品の値上げなどが消費の減退につながることは心配していない」とした。 

これまで、地域金融機関は、信用コストの低下と保有株式や債券の売却で純利益を穴埋めしてきたと指摘。しかし、信用コストは反転の兆しもあり、これ以上下がるとは考えにくい状況。さらには、益出しする株式や債券も減少しており、5─0年という長期的視点で、業務純益の低下傾向は「対応の必要がある」と述べた。また、「金利を上げれば貸出が増えず、業務純益も増えないかもしれない」と指摘した。 

MMT(現代貨幣理論)について総裁は「極端な議論で適切なものとは思ってない」とし、政府・日銀が共同声明で役割分担を明確にした現在の政策運営は「理論的にも政策的にもしっかりしたもの」と述べた。

(清水律子 伊藤純夫)

ロイター
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