コラム

人道支援団体を根拠なく攻撃してなぜか儲かる「誹謗中傷ビジネス」

2024年07月29日(月)00時00分

裁判で敗訴しても、また同じようなNPO攻撃が行われてしまうのは、先般のコラムで扱った「誹謗中傷ビジネス」の問題がある。Colaboとの裁判で、暇空氏には220万円の損害賠償が命じられた。しかし、暇空氏はColaboに関係する訴訟を目的として、その同調者たちからおよそ1億円以上のカンパ金を集めたといわれており、その他にこの裁判をネタにした動画配信やnote記事を流すことによる収益もある。したがって数百万円程度の損害賠償では歯止めにはならないのだ。

重要なのは、「誹謗中傷ビジネスの」手法は、このやり方にうんざりすることなく、積極的に応援する同調者がいなければ成り立たないということだ。その点、暇空氏は前述の通り、先の東京都知事選に出馬し11万票を集めているのだ。

最大の被害者は支援対象者

名誉毀損裁判での敗訴を経ても止まらない、困窮者への支援活動を行っているNPO団体などへの攻撃で、最も被害を受けるのは、仁藤氏が会見で明らかにしたように、困難を抱えている当事者に他ならない。Colaboが対象とする行き場のない女性たちや、「キッズドア」が対象とする困窮家庭の子どもたちが、活動への妨害によって十分に支援されない状況が生じてしまう。

名誉毀損裁判での敗北も顧みない「誹謗中傷ビジネス」とその同調者を止めることは容易ではない。しかしこのまま放置すればますます支援の現場は疲弊するだろう。僅かな希望があるとすれば、今回の名誉毀損裁判は多くのメディアが報じたことだ。昨年Colaboの会計に不正はなしと報じたメディアは少数だった。これ以上の被害を出さないためには、こうして社会の問題意識を少しずつ高めていくほかはない。

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プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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