コラム

石油大国ベネズエラが原発建設のなぜ

2010年10月18日(月)19時02分

 先ごろ、イランに対して高性能対空ミサイルシステム「S300」を含む大型武器を供与することを中止したロシア。しかしその一方で、核大国を目指すもう一つの国に力を貸そうとしているらしい。その国とはベネズエラだ。ロイターは次のように報じている


 ロシアはベネズエラで初の原子力発電所の建設に協力することに合意した。ベネズエラはロシアから戦車なども購入する一方で、16億ドル近くの石油資源を売り渡す見通しだ。アメリカが世界で幅を利かせていることに反発するロシアは、似たような姿勢をとっているベネズエラのチャベス大統領との関係を強めている。


 今回の合意は、10月15日にモスクワで行われたロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領とベネズエラのウゴ・チャベス大統領の会談の直後に発表された。ベネズエラがこの調子で核開発に力を入れていけば、かつてのイラクのような存在になれるかもしれない。

 ベネズエラが原発建設へ乗り出した背景には、石油に依存しすぎていることへの不安がある。「ベネズエラ経済の94〜95%は石油で成り立っている。石油への依存を軽減するために、他のエネルギー源を増やしたいとベネズエラの人々は考えている」と、英ガーディアン紙は指摘している

 今回の合意に対して、フィリップ・クラウリー米国務次官補(広報担当)は、「われわれは今後の動きをこれ以上ないほど注意深く見守るつもりだ」と発言した。嫌みたっぷりだが、そんなことを気にするチャベスではないだろう。

──
[米国東部時間2010年10月15日(金)17時55分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 18/10/2010.© 2010 by The Washington Post. Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、EUは「ライバルでなくパートナー」 自由

ワールド

プーチン氏、G20サミット代表団長にオレシキン副補

ワールド

中ロ、一方的制裁への共同対応表明 習主席がロ首相と

ワールド

ドイツ、2026年のウクライナ支援を30億ユーロ増
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story