コラム

イラクがW杯テロを防いだ?

2010年05月18日(火)15時44分

 この発表のタイミングと内容は、かなり怪しい。


来月のサッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に対するテロ計画に関与したとして、サウジアラビア人のアルカイダ系メンバーをイラク治安部隊が拘束した。イラク軍のカシム・アル・ムサウィ報道官が17日発表した。ムサウィは詳細を明かさず、証拠を示していないため、事実関係を確認することはできない。

サウジアラビア人のテロ計画関与を明言したこの発表は、同国のターキ・アル・ファイサル王子が、イラク首相が3月の総選挙を「乗っ取った」と非難した2日後に行われた。

イラク首相府の監督下にあるムサウィ報道官によると、拘束されたアブドラ・アザム・アル・カフタニはサウジアラビアの元陸軍中尉。「彼はナジャフとカルバラの聖廟を爆破しようと計画していた」と、バクダッドでの記者会見でムサウィは述べた。

「そのうえW杯開催中に南アフリカでテロを起こそうとしていた。アルカイダの中央組織がウサマ・ビンラディンの側近アイマン・アル・ザワヒリと連携してもくろんだ計画だ」


 もしそれが本当だとしても、イラク当局はテロの脅威を南アフリカに通報しなかったらしい。容疑者が2週間前に捕まっているのにもかかわらずだ。近ごろ評判の芳しくないイラク政府は、名誉挽回のために「われわれがW杯を救った」と自慢しても悪くないのではないか。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年05月17日(月)14時04分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 18/5/2010.© 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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