コラム

独裁者におもねるブレアの偽善

2009年12月17日(木)15時23分

 トニー・ブレア前英首相は13日、サダム・フセインが大量破壊兵器を開発している証拠がないと分かっていたとしても、フセイン政権を転覆させるためにイラク侵攻を支持しただろうと認めた


「それでも彼を排除するのは正しいと思ったはずだ。もちろん、その場合は脅威の性質について別の議論を展開する必要があっただろう」。ブレアは今朝放送されたBBCとのインタビューでそう語った。

 ブレアは、フセイン排除によってイラクがより民主的な国になるための基礎を築くことができたと主張。近く行われるイラクの総選挙について「この地域にとって何年もの間で恐らく最も意義深い出来事」と表現した。

 フセインについては、「彼とその2人の息子が権力を握ったままのほうが良かったとは、とても思えない」と述べた。


 しかし、ブレアの(民主主義を広めようとする)ウィルソニアン的原則はアゼルバイジャンには適用されないようだ。彼は今月、同国の化学工場の開所式で演説して15万ドルの報酬を受け取り、独裁者であるイルハム・アリエフ大統領と個人的に面会した。だがブレアは、広く確認されている同国のジャーナリスト迫害についてメディアへのコメントを拒否した。

 アリエフのもてなしを受け入れた政界の要人は、ブレアだけではない。米大統領選でオバマの選対本部長を務めたデービッド・プラフは今年2月、同様にアゼルバイジャンを訪問して批判を浴びた。

 ブレアの場合、イラク民主化のために進んでイギリス軍を危険にさらし、ありとあらゆる政治的口実を駆使したことを考えると、アゼルバイジャンへの態度は奇妙なほど対照的だ。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年12月15日(火)12時21分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 16/12/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クシュナー氏のPE、英金融会社オークノース株8%取

ビジネス

インド、減税計画にもかかわらず財政赤字目標達成に自

ビジネス

アングル:今週の世界の金融市場、米国の対ウクライナ

ワールド

イスラエル、ガザ住民移住巡り南スーダンと協議=関係
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story