コラム

アフガン増派、NATOの協力は微妙

2009年12月03日(木)16時44分

 バラク・オバマ米大統領は、12月1日に発表したアフガン新戦略でNATO(北大西洋条約機構)加盟国に対しこう要請した。「この新戦略に同盟国の貢献を望む。すでに追加の部隊を送ってくれた国もあるし、今後数日から数週間の間にさらに申し出があると確信している」

 アフガン新戦略に関する国際協力については、10年1月にロンドンで会議を開いて協議する予定だ。

 NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長は2日、10年に最低5000人を増派できると約束したが、実際にどの国が兵を出すのかは不透明なままだ。


 オバマの支援要請に応えて、ポーランド政府関係者は、戦闘にも即応できる部隊600人を増派し、現在駐留する2000人強の部隊の補強に充てることになるだろうと語った。増派部隊の主な任務は、パトロールとアフガン国軍などの訓練を想定している。

 アルバニアのサリ・ベリシャ首相は、現在250人の駐留部隊を85人増やすと誓った。85人のなかには戦闘員の他、訓練要員や医療スタッフも含まれる。

 スペインの日刊紙パイスによれば、同国国防省は200人を増派し駐留部隊を1200人に増やすことを考慮中だ。イタリアも自国の責務は果たすと宣言し、フィンランド政府は増派要請があったことと、来週にも増派を行う予定であることを確認した。

 イギリスは、オバマ演説に先駆けて500人の増派を発表した。これでアフガン駐留英軍の兵力は1万になる。


■オランダが撤退すれば帳消しに

 フランスとドイツは、1月の会議まで増派決定を見合わせる方針だ。ニコラ・サルコジ仏大統領は以前、「もう一兵も増派しない」と言ったこともある。

 大きな不安要因はオランダだ。オランダ議会は、オランダ軍の任務期限が切れる10年8月1日をもって撤退する決議を行っている(拘束力はない)。もしオランダ政府がこの決議に従い2160人の部隊を引き揚げれば、イギリス、スペイン、ポーランド、アルバニアがこれまでに増派を表明した1385人を軽く超えてしまう。カナダも2800人の全部隊を11年に引き揚げる計画だ。

 オランダが現在の兵力を維持し、各国が約束を守るというベストシナリオの下でも、NATO軍はさらに3500人の部隊をイタリアかオーストラリア、あるいは戦争への関与に対し態度を決めかねているドイツ、はたまたアフガン駐留部隊が1000人にも満たない小国から寄せ集めて兵士を調達しなければならない。

 目標達成は到底、難しそうだ。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年12月02日(水)12時44分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 3/12/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シリア暫定大統領と会談 イスラエルとの

ワールド

米特使、16日にトルコ入り ウクライナ停戦協議で

ビジネス

物価目標に向け進展、関税で見通しに懸念=ジェファー

ワールド

カタール、ボーイング航空機購入契約に署名 2000
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 5
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    終始カメラを避ける「謎ムーブ」...24歳年下恋人とメ…
  • 8
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story