コラム

帰ってきたバーチャル・リアリティーの新境地

2015年03月12日(木)17時39分

 その他にも医療、製造、教育など、使えそうな場面は無数に出てくる。だが、用途以上に興味深いのは、VRというテクノロジーの復活劇である。

 実は、VRはもう20年近く前に大きな注目を集めたことがあった。先端的なテクノロジーを好む一部の人々が実際にVR空間を作ってデモしているのをいくつも見たことがある。

 しかし、当時はVRの真価を体験することはできなかった。コンピュータ処理能力の限界によって、画面は雑でスムーズに動かない。またVR用のゴーグルもなかったので、VR空間の迫力があまり感じられなかった。いったい何のために必要なのか。まだバーチャルな交流が芽生えていなかった時期でもあり、その用途がよく見えなかったのだ。

 しかし、今こうしてVRが本格的に広まろうとしていることには感慨深いものがある。テクノロジーは早過ぎても受容されない。けれども、環境が整えば復活して生まれ変わることもある。そして、かなり早い時期にその可能性を信じた人々は、やっぱり凄いのだ。

プロフィール

瀧口範子

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』、『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち: 認知科学からのアプローチ(テリー・ウィノグラード編著)』などがある。

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