ニュース速報
ビジネス

アングル:「K字型経済」化が進む米国消費、米企業も明暗分かれる

2026年02月13日(金)18時16分

ニューヨークの百貨店で1月撮影。.REUTERS/Kylie Cooper

Shivansh ‌Tiwary Juveria Tabassum

[11日 ロイター] - 米国の消費は高所得世帯と低所得世帯‌の上下の分断が進む「K字型経済」化が浮き彫りになっており、経営陣のコメント​からもその実態がより鮮明になっている。高級ブランドは富裕層顧客が利益源となっている一方、低価格志向の企業は資金繰りに苦しむ家計の支出抑制と戦っ⁠ている。

ハンドバッグ「コーチ タビー」を抱え​るタペストリー、ラルフローレン、アメリカン・エキスプレスから航空大手のユナイテッド航空、デルタ航空などに至るまでの企業は直近四半期の業績が予想を上回り、高利益率の商品・サービスに惜しみなく支出する富裕層顧客が業績に寄与した。

一方、ペプシコ、クラフト・ハインツ、ペイパルはいずれも低所得層が予算をやりくりするために購入を先送りする圧力に直面していると説明した。

連邦政府の統計に基づ⁠いたムーディーズ・アナリティックスのレポートによると、現在の全米消費支出の半分弱を占めているのは所得上位10%の世帯だ。約30年前には所得上位10%の世帯が占める割合は全米消費支出の3分の1強にとどまっていた。

中⁠間所得層の​消費者も脱落し始めているとの懸念も一部出ている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストらは「高所得層の所得増加が引き続き旺盛な一方で、中間所得世帯の賃金上昇は鈍化しているようだ」と指摘した。

このような格差の背景には、よく知られた算術的要因がある。低所得世帯は家計のより大きな割合を食品、ガソリン、家賃などの必需品に充てているため、インフレの影響をより強く受ける。その結果、自由裁量支出の余地が少なくなり、予期せぬ出費の余裕もほとんどない。

ミシガン大の消費者信頼感指数は2月に57.3へ上昇し、昨年8月以来、半年ぶりの高水準とな⁠った。それでも2025年1月の水準と比べると約20%下回っている。

消費者調査ディレクターのジョアン・‌スー氏は「株式ポートフォリオが最も大きい消費者の信頼感が急上昇した一方、株式を保有しない消費者の信頼感は停滞し、引き⁠続き低迷し⁠た水準にある」と指摘した。

米航空業界は大手企業が法人向け出張、ロイヤルティープログラム、フルフラットシートやシャンパンのサービスなどの特典に依存し、収益源を旅客機の前方にある上級クラスの利用者へシフトさせている典型例だ。

デルタのエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は「消費者部門の強みは曲線の上位層にある」とし、「低所得層は苦境にあるが、幸いにも当社はそこに依存していない」と説明した。

大衆市場向け企業は、自‌社の市場シェアを守ろうと全力を挙げている。

クラフト・ハインツのスティーブ・カヒレーンCEOは11日、26年通期決​算の業績見‌通しの下方修正を発表した際に「消費者⁠心理は悪化し、業界動向は鈍化し、地政学的な不安定性が増​している」と説明。

「レイズ」や「ドリトス」などのスナック菓子を複数回値上げしたことが消費者の反発を受けたペプシコは、最大で15%の値下げを実施した。

ペプシコフーズUSのレイチェル・フェルディナンドCEOはロイターに対して「過去1年間、消費者の声にじっくりと耳を傾けてきたが、彼らは負担感を抱いていると訴えている」と語った。

ニューウェル・ブランズも先週、一部ブランドの価格を引き下げた。クリス・ピーターソンCEOは18―24歳の消費者が特に支出を抑制してお‌り、台所用品や文房具の購入減が目立っているとした。

ピーターソン氏や、ホテル運営大手マリオットのリーニー・オバーグ最高財務責任者(CFO)らはK字型経済が短期的に変化する可能性は低いとの見方を示した。

ムーディーズ・​アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは「高所得世帯⁠(所得上位20%)と低・中所得世帯の消費格差はかつてないほど広がり、拡大を続けている」と指摘した。

BofAの1月の預金データによると、低所得世帯の税引き後賃金・給与増加率は前年同月比で0.9%上昇、中所得世帯は1.6%上昇にそれぞれとどまった。一方、高所得世帯は3.7%上がった。

BofAの​アナリストらはリポートに「低所得層と高所得層の賃金上昇率の差はさらに拡大していないものの、縮小もしていない。これが低所得層の消費増が後れをとり続けている理由だ」と記した。

比較的富裕な層をクレジットカードの顧客に抱えるアメリカン・エキスプレスは、プレミアム商品への需要が「非常に強い」と説明。一方、ペイパルは小売りの加盟店全体、特に低・中所得層消費者にしわ寄せが出ていると解説した。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国新築住宅価格、2月も下落 北京・上海は上昇

ビジネス

中国不動産投資、1─2月は前年比11.1%減

ワールド

ドバイ空港付近のドローン攻撃による火災鎮火、フライ

ワールド

高市首相、ホルムズ護衛活動「何ができるか検討中」 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 6
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 7
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中