コラム

リビアの「謎」がひとつ解けた

2011年04月22日(金)13時09分

 大震災と原発事故の陰に隠れて、日本国内ではあまり報道されませんが、北アフリカ、中東情勢は一段と不透明さを増しています。リビアの反政府勢力を支援するため、NATO(北大西洋条約機構)軍がカダフィ政権の軍を攻撃。これでカダフィ政権が崩壊するかと思いきや、どっこいしぶとく生き延びているからです。

 でも、今回の事態がきっかけになって、カダフィ大佐の正体が、少しずつ判明してきました。

 カダフィ大佐については、アメリカの駐リビア大使が国務省に送った公電を、内部告発サイト「ウィキーリクス」が暴露して話題になりました。この中でカダフィ大佐について、「官能的な金髪女性」のウクライナ人看護師が常に付き添い、彼女の助けなしには何もできないという趣旨の報告があったからです。

 反政府デモが活発になった後、彼女がウクライナに逃げ帰ったという報道もあり、カダフィは遂に彼女にも逃げられたと受け止められました。

 ところが、本誌日本版4月20日号に、彼女の独占インタビューが掲載されています。タイトルは「私が世話したカダフィ」です。これぞ特ダネ。カダフィの隠れた人物像が浮き彫りになっています。

 カダフィの傍にいた女性看護師は全員ウクライナ人だったそうです。それが何人だったのか、記事には書いてないのが残念です。

 カダフィの健康状態はどうか。「彼は素晴らしく健康だった。脈拍も血圧も、実年齢よりはるかに若い」そうです。

 アフリカの貧しい国々を訪れたときは、子どもたちにお金やキャンディーを投げ与える一方で、「感染症が怖いから子供たちには近寄らなかった」とのこと。さもありなん、ですね。

 カダフィは、外遊先ではテントを張って、そこで寝るという奇行が知られていましたが、それは嘘だったというのです。「テントは公式会談に使っただけだ」とは。

 彼女がリビアから逃げ出したのは。お腹の中の赤ちゃんの父親であるセルビア人との関係を認めてくれないと思ったからだそうです。なんだかゴシップ雑誌っぽい内容になってはいますが、隠された国際情勢を伝える週刊誌の役割は果たしています。

 一方、翌週の4月27日号には、「リビアで始まるNATO崩壊」の記事が。

 欧州の安全のために設立されたはずのNATOが、欧州から離れたアフガニスタンに軍を派遣し、今度は北アフリカのリビア。こうなると、「NATOとは何のためのものなのか、なぜまだ存在するのか、という疑問」が出てくると問題提起しています。

 その通り。NATOはそもそもソ連・東欧諸国の軍事力から西欧を守るために設立された集団自衛組織です。それが、自国の防衛ではなく、遠くアフリカに遠征することにどんな意味があるのか。その戦闘で死者が出たら、国民は、その犠牲や負担を許容するのか。

「リビア民主化」の言葉は美しくても、今後の見通しは明るくないのです。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バンス米副大統領、パキスタンのシャリフ首相と会談

ワールド

米が資産凍結解除に同意とイラン筋、米当局者は否定

ワールド

ガザ平和評議会、資金不足報道否定 「要請全額満たさ

ワールド

情報BOX:米とイラン和平交渉、知っておくべき主な
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story