コラム

Web3で作る新しい家族の形=ブロックチェーンに刻むパートナーシップ証明

2022年11月30日(水)14時10分

ブロックチェーンが新しい家族の形を生むかもしれない(写真はイメージ) KSChong-iStock.

<ブロックチェーンはなぜ画期的と言われるのか。その社会実装例の1つが同性婚だ。時代遅れの国家の許しを待つ必要がなくなるかもしれない>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

日本ではLGBTQの人たちの婚姻が法律で認められていない。だが法律を変えなくてもWeb3技術で婚姻届と同等の恩恵を受けられるかもしれない。そう思わせてくれるのが、ブロックチェーン技術を活用し家族関係証明書を発行している一般社団法人Famieeだ。法律を変えなくてもビットコインという世界通貨ができたように、法律を変えなくても新しい結婚制度が可能かもしれない。Web3の社会実装の1つの事例になりそうだ。

法的な婚姻が認められていないために、同性カップルが受ける不都合は幾つかある。例えば、住宅ローンを組むときにカップルとしての収入合算が認められない。生命保険の受取人になれない。家族として認められないので手術の同意書に署名できない。会社の福利厚生を受けられない。ほかにもいろいろあることだろう。

国が同性婚を認めないので、婚姻同等のパートナー関係であることを認めるパートナーシップ証明書を発行する自治体が増えてきている。

Famieeのパートナーシップ証明書は、スマホのアプリから申請し、発行の事実をブロックチェーン上に記載する仕組みだ。ブロックチェーンは、仕組み的に改ざんがほぼ無理だし、未来永劫残る。政府、自治体よりも、証明書の優れた記録方法かもしれない。

記録するだけでは意味がない。結婚同等の恩恵を受けられなければ意味がない。Famieeでは既に70以上の企業、保険会社、病院、自治体などがFamieeの取り組みに賛同。Famieeが発行する家族関係証明書(現在は同性パートナーシップ証明書のみ)を提示する同性カップルに対し、夫婦と同等に扱うことを宣言しているという。Famieeのホームページには賛同し導入している組織のリストが掲載されている。賛同する組織が十分に増えてくれば、法律が改正されなくても婚姻と同様の恩恵を受けることができる。賛同する組織が今後どの程度増えるのかが重要なのだと思う

ただいくらブロックチェーンに記録されるからといって、「われわれ結婚します」と宣言しただけの同性愛カップルを、夫婦同等と認めてもいいものだろうか。婚姻関係には、財産分与、扶養、貞操などの義務が伴う。「権利と義務」の「権利」だけを求めるカップルに悪用されないだろうか。Famieeの発起人で代表理事の内山幸樹氏に聞いてみた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story