コラム

いよいよスマートスピーカー発売ラッシュ。最後に笑うのは?

2017年09月14日(木)20時00分

合従連衡が進み、最終的にはすべてのプレーヤーが繋がる時代

ではどのプレーヤーが勝利するのか。恐らく1社の一人勝ちという状況にはならないだろう。これから各プレーヤーは、自分の強みを強調してくると思われる。アマゾンはユーザーの購買履歴などのデータや、スマートホーム市場での独占的な立ち位置を強みに、戦ってくることだろう。マイクロソフトは、Windowsユーザーを抱えている。アップルは、iTunesやMac、iPhoneユーザーを抱えていることが強みになる。グーグルは、検索ユーザー、Androidユーザーを抱えている。LINEは、一部アジアの若い女性の間で圧倒的な強さを誇っている。

こうしたそれぞれが抱えるロイヤリティーの高いユーザー層こそが、それぞれのプレーヤーの強みになる。これまで蓄積してきたデータがそのまま使えるので、ユーザーは、自分が一番使っているサービスのボイスデバイスを購入したくなるからだ。事実、僕の周りの友人たちにヒヤリングしたところ、月額料金を支払ってiTunesを利用している友人たちはアップルのボイスデバイスを購入すると答え、アマゾンのプライム会員になっている友人たちはアマゾンのボイスデバイスを購入したいと話してくれた。アマゾンがプライム会員向け特典を格安利用料で盛りだくさんにしているのは、ボイス時代の覇権争いが本格化する前にできるだけ多くのユーザーを抱え込んでおきたいからだろう。

メーカーを超えてAIが連携する?

それぞれのプレーヤにはそれぞれの強みがあり、どのプレーヤーも自分のユーザーを死守しようとする。なので、勢力図が簡単に塗り替わることはないだろう。そして「敵の敵は味方」というロジックで、プレーヤー同士の連携が始まる。アマゾンとマイクロソフトが組んだのは、グーグルという共通の敵に対抗するためである。

こうした合従連衡はさらに進み、二極化し、さらにはすべてのAIが連携するのではないかと思う。アマゾンとマイクロソフトが連携したおかげで、アマゾンEcho上で「コルタナに代わって」と話しかければ、マイクロソフトのAIコルタナを呼び出すことができる。同様にWindows搭載パソコン上で、コルタナに対して「アレクサに代わって」と話しかければ、アマゾンのAIであるアレクサが立ち上がるようになる。これと同じ様に最終的には、1つのデバイスですべてのプレーヤーのAIを呼び出せるようになるのだと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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