コラム

旧ツイッターの怪しい動き...「人類の家畜化」が分断と対立の行き着く先なのか

2026年03月16日(月)21時15分
マライ・メントライン(翻訳家、通訳、エッセイスト)

ネット環境に接続している者はみな基本的に「自分にとって居心地が最適化された情報の繭(まゆ)」のようなものに包まれる状況にいる。多少のストレスになることは織り込み済みで、それが「人としての最適化」として認識され、かつ受け入れられればイーロン・マスク、あるいは権力サイドの勝利なのだ。

ここで問題となるのは、加工された情報環境と現実環境の間に生じる齟齬と矛盾である。個々の人間にとって、現実は加工情報ほど甘くない。これをどうにかしようと突き詰めてゆくと、その結果生じるのは恐らく、映画『マトリックス』で描かれた巨大な人間農場システムのようなものだろう。


仮想と現実の決定的な逆転。

全ての(またはほとんどの)者が現実のリアル人生を捨て、巨大な情報システムから配信される環境パラメーター設定、あるいはコンテンツとして「人生」を生きる、いや消化する。肉体としての生命は、睡眠状態のまま、死ぬまでベストの状態で機械的に管理される。

それの何が良いのかといえば、たぶん地球への環境負荷を最小にできることだろう。もちろん設備投資やら何やらの有形無形のコストがすごいことになるだろうが、それさえしのげば、この惑星にとって最高のSDGsが成立してしまうのだ。おお、なんということ!

今、例えば政治家やいわゆるテック企業の上層部がそういうベクトルで考えているかは定かでない。だが私の友人、特にゲーム系のクリエーターたちは、少なからずこのような未来像を「わりと現実的」と認識している。「そうじゃないと、未来環境は持ちこたえられないと思いますよ」という話だ。

そう聞いたときは「いやぁ、さすがにどうかな?」と思っていたが、昨今、世界的に人間の情動がナチュラルに「そういう世界向き」になってきている状況を見るに、なるほどそういう形で歴史は収束していくのか......と、大いなる寂寥感とともに、いろいろ納得せずにいられない。



newsweekjp_20251118090407.pngマライ・メントライン
MAREI MENTLEIN
ドイツ北部キール出身。2度の留学を経て2008年から日本在住。独TV局プロデューサーや翻訳、通訳、執筆、コメンテーターなど幅広く活動する自称「職業はドイツ人」。近著に『日本語再定義』(小学館)など。

【関連記事】
なぜXのAI「Grok」は反逆的なのか?...答えはイーロン・マスクの原点となった「あるSF小説」に
イーロン・マスクがぶっ壊したツイッター...「公共広場」を焼け野原にした迷走の全て
【イラン停戦交渉は平行線】専門家「トランプは八方塞がり」「ドローン戦はイラン優勢」...米本土テロと「戦争ループ」の可能性も

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・カン・ハンナ(歌人、タレント、国際文化研究家)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
・マライ・メントライン(翻訳家、通訳、エッセイスト)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡船舶護衛、欧州の多くで慎重論 「われわ

ワールド

供給確保優先、ホルムズ海峡のイラン船舶通過「問題な

ワールド

米中首脳会談延期なら、イラン情勢が理由 貿易問題で

ワールド

イラン攻撃で3週間の作戦計画、イスラエル軍 レバノ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story