「漢文は必要ない」論に、アメリカ人として物申す
ただ、小説に書かれたのは「不レ惑」ではなく「不惑」。ということは、もしかして漢文の授業でも返り点なしで指導できるかもしれない。
実際に返り点不要論を主張する教師もいるようだし、国語の先生にはその方法をぜひ探ってほしい。
これは中高生というより大人向けの提案だが、もし漢文が嫌いでも、『論語』などの教養を身に付ける方法はある。現代中国語を学習することだ。
突拍子もなく聞こえるかもしれないが、むしろ一石二鳥になると思う。
(1)中国語学習は、漢文・古典中国語と同じく日本の教養につながる。
(2)漢文と違って、世界で計11億人が使用する生きた言語を学ぶことになる。
僕自身、日本語の次に中国語を学んだが、「塞翁が馬」は「塞翁失马」(なるほど、馬を失ったんだな)、「井の中の蛙(かわず)」は「井底之蛙」(蛙〔かえる〕は深いところにいたんだな)と知ることで、日本語を通じて得た知恵が強化された。
時代の変化に合わせ、日本の教育現場で確定申告や投資のやり方、PCスキルやSNSのことを教えたほうがいい。それが優先されてもいいかもしれない。でも、国語の根底にある漢文を切り捨てるべきではない。
それでは、「矫枉过正」(角を矯めて牛を殺す=ゆがみを正そうとして行きすぎること)になってしまうぞ。
トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。
2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」
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