ミラノ・コルティナ オリンピックのメダル破損騒動の真相 ── 「栄光が壊れた」は安全設計の裏返し
近年続くメダルのトラブル
「最近の五輪ではメダルのトラブルが続発している......」という感覚は、事実として複数の大会で不具合が話題になったことが影響している。リオ(2016年開催)では、変色や錆びなどの劣化が問題化し、一定数のメダルが回収・修理対象になったと報じられた(主に大会後に問題化)。
東京(2020=2021年開催)は、金メダルが「剥がれた」とする投稿が注目を集めたが、大会運営側は"金メダルそのもの"ではなく、傷や汚れを防ぐ表面の保護コーティングの剥離の可能性を示し、大規模な交換騒動には至らなかった。
パリ(2024年)では、変色・欠け等の訴えが相次ぎ、IOCが同一モデルで交換する方針を示したと報道され、100個以上のメダルが返却されたと伝えられた。
錆びる/剥がれる/欠ける/外れる──メダルの"壊れ方の種類"が増え、短いスパンで連続したため、オリンピックのメダルの品質劣化という印象が強まった。
「安全のため外れる」が、表彰台では"壊れた"に見える
ミラノ・コルティナ大会で焦点になったのは、首にかけるストラップのブレークアウェイ機構(強い力がかかると外れる安全機構)だった。運営側は「窒息を防ぐため、一定の力がかかると外れる仕組みが必要だ」という趣旨を説明し、原因究明と対策を実施したとしている。
ここでいうブレークアウェイは、要するに「外れない首掛け」が生むリスクを避けるための対策だ。首から下げるひも状のものは、混雑で引っ張られたり、何かに引っかかったりした瞬間、頸部に強い力が集中する可能性がある。
安全工学では、こうした危険(とりわけ絞めつけ・頸部損傷のリスク)を減らすため、引っ張られたら外れる(あるいは裂ける)設計が推奨されることがある。学術論文でも、首掛けストラップに「安全のためのブレークアウェイ」を備える必要性が議論されている。さらに米CDCのNIOSH(労働安全衛生)の教材でも、紐や名札が掴まれる危険がある場面では、ブレークアウェイの安全コード/ランヤードを使うよう明記している。
だが、五輪の表彰式は特殊だ。選手は跳びはね、抱き合い、国旗を振り、冬季なら厚手のウェアや装備も絡む。安全のための「外れやすさ」は、祝祭の場面では「落ちやすさ」「壊れやすさ」として映る。ここに今回の皮肉がある。安全設計としては合理性がある一方、表彰台というハレの場では、「栄光が壊れた」という物語に一転してしまう。
メダルのブレークアウェイ機能は、イベント運営が避けるべき事故(引っ張り・引っかかりによる頸部リスク)への安全配慮であるが、安全が"見えない価値"である限り、それは事故が起きないと評価されにくい。しかし、外れた瞬間だけは誰の目にも見える。





