最新記事
学校

日本の教員は依然として長時間労働......保護者対応や煩雑な事務作業に追われ

2025年11月5日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
教員の長時間労働

日本の中学校教員は勤務時間の半分以上を授業以外の業務に取られている photoAC

<他の先進国と比較すると、日本では教員の「教えることの専門性」が軽んじられている>

OECDの国際教員調査「TALIS 2024」の結果が公表された。調査事項は多岐にわたるが、注目すべきなのは教員の労働時間だ。日本の中学校教員の数値をみると、週の平均勤務時間は55.1時間。前回(2018年)の59.1時間と比べて減少していて、「教員の仕事時間は大幅に改善」と報告書では言及されている。業務の見直しや、教員業務支援員の導入といった政策の効果とも言えるだろう。

だが、それでも1日あたり10時間以上働いている計算で、労働時間が長いことに変わりはない。韓国(43.1時間)、アメリカ(45.3時間)、フランス(38.7時間)、スウェーデン(44.0時間)、フィンランド(36.0時間)といった他の先進国と比較しても長い。


個票データをもとに勤務時間の分布を出すと、日本の中学校教員の40.3%が週60時間以上勤務、過労死レベルの働き方をしていると言っていい。横軸に平均勤務時間、縦軸に過重労働の働き方をしている者の割合をとった座標上に、調査対象の55カ国を配置したグラフにすると<図1>のようになる。

newsweekjp20251105014156.png

日本は右上にぶっ飛んでいる。週の平均勤務時間50時間超、週60時間以上勤務者4割というのは、国際的に見て異常な状態だ。以前と比べて改善はしているものの、教員の労働時間が世界で最も長い実態に変わりはない。

教員の主な業務は授業なのだが、日本の中学校教員で言うと、週の授業時間(準備含む)の平均値は26.0時間で、参加国の平均値(30.0時間)よりも少ない。上述のように、総勤務時間は55.1時間なので、残りの29.1時間、仕事の半分以上が授業以外の業務ということになる。このような国は他にない。

日本の教員の長時間労働は、授業以外の業務が多いことが原因だ。膨大な事務作業、部活指導、保護者対応、さらには学校の安全管理(点検)などだ。教員は、教えることの専門職ではなく、あたかも「何でも屋」であるかのように扱われている。採用に際して「教員免許は不要」を掲げる自治体も出てきているが、こういうところにも、教員の専門性を軽んじる姿勢が表れている。「何でも屋」を雇うに当たって、専門性を担保する免許状など必要ない、ということだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、24%の対米関税を1年間停止へ 10%の関税

ワールド

UPS貨物機が離陸直後に墜落、4人死亡・11人負傷

ワールド

パリ検察がTikTok捜査開始 若者の自殺リスクに

ワールド

中国、輸入拡大へイベント開催 巨大市場をアピール
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中