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千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末

2025年7月12日(土)12時15分
印南敦史(作家、書評家)

市民感覚からすれば理解しづらい「本音」


 市長の年収は税込みで約1500万円、衆議院議員の年収は、歳費に加え、わけのわからない文書通信交通滞在費や立法事務費といったものを加えると、年間で市長の3倍くらいになる。衆議院1期だけでもやれば、年金をいつからもらおうかなんてことも一切考えなくても済むというのも大きな魅力だった。(187ページより)

それはそうかもしれないが、こういうことを書けてしまうのは、市民感覚からすれば理解しづらい話だ(と、私は思う)。ましてや、「そもそも野党系だったのに、それほど簡単に自民党に寝返ってしまうのか」と思わざるを得なかったが、それも稚拙な庶民感覚でしかないのだろうか。

ともあれそんななか、2020年8月28日に安倍首相が体調不良を理由に辞意を表明し、9月には菅義偉氏が総裁に就任。ご祝儀相場で内閣支持率が高いうちに衆議院解散という見立てが喧伝され始める。

一方、不祥事を起こしたA議員が辞職を表明しなかったため、解散総選挙となれば現職のA議員が次期衆院選挙の自民党公認候補ということになる。

そうした状況下で何もできずにいた著者は、日本維新の会からアプローチを受ける。


「清水さんのような"大物"が維新公認で衆議院選挙に出れば、仮に小選挙区で落ちても比例区の南関東ブロック(千葉、神奈川、山梨の三県からなる)での1位当選は固いです。ぜひうちからの出馬をご検討ください」
"大物"という言葉に私の自尊心がうずいた。
 私は維新の政策に100%賛同していたわけではなかったが、長年市長を務める中で維新の地方分権に関する政策には共鳴する部分もあった。とくに大阪都構想は素晴らしい発想だと捉えていた。東京一極集中を廃し、大阪を東京に続く第二の首都とし、ひいては日本を多極的な構造の国家とし、多くの地方が切磋琢磨し合って国を発展させていく、という構想はまさにこれからの日本が進むべき方向だと感じていた。また、そういう維新の青臭い発想力にも惹かれるところがあった。(189〜190ページより)

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