最新記事
核保有

「安全なのは強者だけ」...止めるはずが核拡散を逆に招いた、イスラエルとアメリカの「愚かな力の論理」

AN IRANIAN BOMB JUST BECAME MORE LIKELY

2025年7月1日(火)12時50分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

ただしIAEAは5月末の報告書で、イランに「現在進行中の未申告で体系化された核計画が存在することを示す、信頼できる兆候はない」と結論付けている。

にもかかわらず、アメリカとイスラエルは、IAEAの保障措置下にあり、核拡散防止条約(NPT)に基づいて監視されていたフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの核関連施設を攻撃。核兵器開発を防ぐための合法的な検認の枠組みを自ら破壊してしまった。

今回の攻撃はIAEAによる査察体制の権威を損なっただけでなく、NPTが定める核の平和利用の原則を侵害し、国連憲章を含む国際法にも違反している。


かつてのイラクと同じ道を進む

相手国の体制転覆を狙って戦争を仕掛けてきた核超大国アメリカと、NPT加盟を拒否する陰の核保有国イスラエルは今回、「ルールに従うのは弱者だけ」「安全なのは強者だけ」という明白なメッセージを発した。

実際、核兵器を保有していれば、国際法を破っても構わないのだ。

外交が頓挫し、査察への信頼が消え、強制手段が常態化し、ダブルスタンダードが容認されている現状で、「核を持たないほうが賢明で、戦略的にも実行可能だ」とイランを説得する手段は残されているのだろうか。

核保有以外に自国を守る方法はないとイランが判断するのは、ほぼ確実だ。イランにとっては、IAEAの枠組みを離脱して、核兵器開発に向かって突き進むべき理由は山ほどある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、6月は49.0 関税背景に

ビジネス

米5月求人件数、37.4万件増 関税の先行き不透明

ワールド

日本との合意困難、対日関税は「30─35%あるいは

ワールド

トランプ大統領、貿易交渉で日本よりインドを優先=関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中