水源独占、資源乱掘、先住民迫害...中国のチベット高原「破壊」がアジア全域に及ぼす影響とは
CATASTROPHE ON THE ROOF OF THE WORLD
それでも中国のダム建設の野心はとどまるところを知らない。長江にある三峡ダムは世界最大だが、中国がチベット高原の地震多発地域を流れるヤルンツァンポ川(ブラマプトラ川上流部)に建設中のダムはその規模を上回る。完成すれば、インドやバングラデシュへの水の流れが大きく変わる。地域の食料安全保障や生態系の均衡が脅かされるばかりか、下流域の国々に対する中国の地政学的影響力がさらに強まる。
水の「武器化」という懸念が現実味を帯びているのだ。水は今や「新たな石油」と呼ばれるほど、重要な戦略的資源となった。
だが、中国によるチベット高原への攻勢は水だけにとどまらない。中国はリチウム、金、銅など重要な鉱物資源が豊富なチベットを貪欲に採掘している。結果として森林伐採が進み、有毒な廃棄物が出る一方で、チベット高原の軍事化が進行している。
中国による破壊の全容を把握することは難しいが、1つ確かなのはチベット高原の生態系が次第に脆弱になっているということ。この土地は気候変動に非常に敏感だ。今では温暖化が地球平均の2倍の速さで進行し、氷河は極地よりも速く解ける。このため水の貯蔵能力が低下し、河川の流れが大きく変わりつつある。