最新記事
大学教育

今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実

2025年5月28日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
誰もいない大学講堂

学生数の減少は特に低ランク大学で入学試験の形骸化も招いている photoAC

<関東の低ランク私大では学生が定員の60%に満たない学部が続出している>

18歳人口の減少により、経営が苦しい大学が増えている。全国の私立大学のうち、入学定員充足率が100%に満たない、すなわち定員割れを起こしている大学の割合を見ると、1990年では4.1%だったが2024年では59.2%にもなっている(日本私立学校振興・共済事業団)。今では、私大の6割が定員割れだ。

廃校に追い込まれる大学も出てきている。1カ月ほど前、京都ノートルダム女子大学が学生募集停止を発表したが、この大学はどれほどの苦境にあったか。昨年春の定員充足率を学部別に見ると、国際言語文化学部が51.1%、現代人間学部が56.4%(旺文社『大学の真の実力2025』)。定員の半分しか学生が集まらず、かなり苦しかったことがうかがえる。


だが、同程度の危機にある大学(学部)は他にもある。関東1都6県の195私立大学・751学部の定員充足率を計算し、分布をとってみると、60%未満の学部の割合は5.6%、80%未満にまで広げると15.3.%となっている。

偏差値が低い学部だと、この割合はもっと高くなる。<表1>は、751の学部を偏差値のグループ別に分けて、定員充足率の分布をとったものだ。

newsweekjp20250528015533.png

F群は偏差値45未満、E群は45以上50未満、D群は50以上55未満、C群は55以上60未満、B群は60以上65未満、A群は65以上を意味する。

横線より上が定員割れの学部だが、F群では全体の70.4%にもなる。E群では57.5%、D群では22.5%と、ランクが上がるにつれて低くなっていく。A群になると、反転して定員割れの率が高くなるのは、入試を厳格に行っていて、合格者を多く出していないためだろう。東大等の有力国立大学に流れる者も多いとみられる。

定員割れの深刻度にはレベルがあるが、F群では充足率80%未満の学部が42.3%、60%未満が19.7%を占める。上記の京都ノートルダム女子大学と同じくらいの危険度で、いつ同じ状況に追い込まれてもおかしくない「閉鎖予備軍」だ。

「大学全入」を通り越して「大学倒産」時代になると言われているが、偏差値グループ別に分析すると、事態の深刻さがより伝わってくる。2040年の大学入学者の推計値は46万人で、今の3分の2になる。こうなった時、F群やE群の大学は撤退させられている可能性が高い。

試写会
『おばあちゃんと僕の約束』トークイベント付き特別試写会 5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税50%に引き上げ表明 

ワールド

日鉄は「素晴らしいパートナー」とトランプ氏、買収承

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 5
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 6
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 9
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中