最新記事
ウクライナ戦争

大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍から脱走したインド人を待っていた「人間性のかけらもない世界」

ESCAPING THE RUSSIAN ARMY

2025年4月3日(木)17時24分
ジェームズ・ビアズワース(ジャーナリスト)

インドのモディ首相とロシアのプーチン大統領

インドのモディ首相(左)はロシアのプーチン大統領(右)に対応を要請してきた SEFA KARACANーANADOLU/GETTY IMAGES

パサンは同年10月に除隊してモスクワに戻り、市民権を申請した。

やがて彼の元に、ウクライナから出られなくなったというインド人から、電話が入るようになった。大半はYouTubeを通じてパサンを知った人たちだった。パサンはロシア軍の勧誘やカーンのような悪質なブローカーについて、YouTubeで注意を喚起していたのだ。


パサンは前線から助けを求めてきたインド人のリストを作り、情報を大使館と共有した。調査を重ねると、だまされてロシアに入った100人を超える男たちの氏名が判明した。

ディプロマット誌が入手した資料によると、23年12月〜24年9月に、ロシア軍と契約を結んだインド人は79人。だが、実際は150人近くに上る可能性が高く、少なくとも20人は今も最前線にいるとパサンは言う。

また約80人は除隊し、既にインドに帰国したとされるが、そこまで幸運でなかった人もいる。

24年2月21日、ウクライナ軍のドローンが、ドネツク地方を占領するロシア軍の拠点を襲い、初めてインド人の死亡が確認された。グジャラート出身のししゅう職人マングキヤだ。

その1週間前にターヒルが話をしたとき、「誰にも言わずに、急いでインドに帰れ」と、マングキヤは言っていたという。

今年1月のインド外務省の発表では、この戦争で死亡したインド人は計12人。前線には18人がいるとみられるが、16人は消息不明だという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中