最新記事
ウクライナ戦争

捕虜の80%が性的虐待の被害に...爪に針を刺し、犬に噛みつかせるロシア軍による「地獄の拷問」

THE STORY OF KIRILL, A RUSSIAN PRISONER

2024年12月5日(木)16時21分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)
今年6月、雨のキエフで行われた「アゾフ兵士の解放」を求めるデモ

今年6月、雨のキエフで行われた「アゾフ兵士の解放」を求めるデモ TAKASHI OZAKI

<人目の届かない拘置所は無法地帯。ウクライナ兵が2年半の捕虜生活で最も絶望した瞬間とは>

2年半にわたりロシア軍の捕虜となっていたが、今年9月に解放されたウクライナのアゾフ兵士の1人、キリル・ザイツェバが語った過酷な捕虜生活と、彼らの帰りを待ち続けた家族たちの様子を3回に分けて紹介する。本記事は第2回。

※第1回はこちら:朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だった...解放されたアゾフ大隊兵が語る【捕虜生活の実態】

◇ ◇ ◇

捕虜拷問の証拠を隠滅か?

ドネツク人民共和国の過激派やロシアの民間軍事会社ワグネルの傭兵、そしてFSBは入れ墨をしたアゾフの兵士を見つけては木づちで殴ったり、犬にかみつかせたりした。高い塀に囲まれた敷地にうめき声が響いた。誰もが精神に支障を来し、感情がなくなっていったという。2カ月半が過ぎた7月29日未明、キリルが遭遇したのがあの事件だった。

「爆発が3回あって人々の狂ったような悲鳴を聞いた。僕は別のバラックにいたが、火薬の臭いのあと、揚げた肉のような臭いがした。あれはロケットによる攻撃ではなく、内部で仕込まれた爆発だった」


53人が殺され、130人以上が負傷したとされるオレニフカ捕虜殺害事件。米マクサー・テクノロジーズ社が撮影した衛星画像を見ると、刑務所の北側中央にある建物だけが破壊されている。

激しく拷問した捕虜を集め、加害の証拠を隠滅しようとした説が有力だ。一方、ロシア政府はウクライナ軍による砲撃だったという主張を変えていない。

キリルたち生存者はロシア領タガンログの拘置所に移された。10月3日、キリルはそこで23歳の誕生日を迎えた。その直後、彼は絶望の淵に追いやられることになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中