捕虜の80%が性的虐待の被害に...爪に針を刺し、犬に噛みつかせるロシア軍による「地獄の拷問」
THE STORY OF KIRILL, A RUSSIAN PRISONER
今年6月、雨のキエフで行われた「アゾフ兵士の解放」を求めるデモ TAKASHI OZAKI
<人目の届かない拘置所は無法地帯。ウクライナ兵が2年半の捕虜生活で最も絶望した瞬間とは>
2年半にわたりロシア軍の捕虜となっていたが、今年9月に解放されたウクライナのアゾフ兵士の1人、キリル・ザイツェバが語った過酷な捕虜生活と、彼らの帰りを待ち続けた家族たちの様子を3回に分けて紹介する。本記事は第2回。
※第1回はこちら:朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だった...解放されたアゾフ大隊兵が語る【捕虜生活の実態】
捕虜拷問の証拠を隠滅か?
ドネツク人民共和国の過激派やロシアの民間軍事会社ワグネルの傭兵、そしてFSBは入れ墨をしたアゾフの兵士を見つけては木づちで殴ったり、犬にかみつかせたりした。高い塀に囲まれた敷地にうめき声が響いた。誰もが精神に支障を来し、感情がなくなっていったという。2カ月半が過ぎた7月29日未明、キリルが遭遇したのがあの事件だった。
「爆発が3回あって人々の狂ったような悲鳴を聞いた。僕は別のバラックにいたが、火薬の臭いのあと、揚げた肉のような臭いがした。あれはロケットによる攻撃ではなく、内部で仕込まれた爆発だった」
53人が殺され、130人以上が負傷したとされるオレニフカ捕虜殺害事件。米マクサー・テクノロジーズ社が撮影した衛星画像を見ると、刑務所の北側中央にある建物だけが破壊されている。
激しく拷問した捕虜を集め、加害の証拠を隠滅しようとした説が有力だ。一方、ロシア政府はウクライナ軍による砲撃だったという主張を変えていない。
キリルたち生存者はロシア領タガンログの拘置所に移された。10月3日、キリルはそこで23歳の誕生日を迎えた。その直後、彼は絶望の淵に追いやられることになる。
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