最高にファビュラスな海洋生物たち「ファブ・ファイブ」とは?...5種類の「海のアイドル」に未来は託された

Selling the“Fab Five”

2025年3月26日(水)13時54分
デービッド・シフマン(海洋生態学研究者)

この手法は、いわゆる「コンサベーション・マーケティング」の一例だ。愛らしいキャラクターを利用して、商品の代わりに環境保護の理念を売る。

英オックスフォード大学のディエゴ・ベリッシモ(Diogo Verissimo)によれば、「生物多様性への脅威は人間の行動が原因で、それを減らすには人々の考え方や行動を変える必要」があるが、それには「マーケティングの手法が役立つ」。

ほかの地域でも導入を

またベリッシモは「ファブ・ファイブ」の選定について、「どんなに人気の高い動物でも嫌いな人は必ずいる。だから動物を前面に押し出す際には地域の文化・社会的な背景を理解することが重要だ」と指摘し、「今回、オーストラリアコウイカを入れたのは賢い選択だ。コンサベーション・マーケティングで無脊椎動物が選ばれることはめったにない」と評価している。

興味深いことに、ウートンらの報告によれば、MPAの設置に当たって地域住民の声を聞くために設けられる地域懇談会が、今回は全く機能しなかった。沿岸部の海洋資源は住民の暮らしに欠かせないはずなのに、

懇談会を開いても人が来ない。こちらから出かけて行っても、意見は聞けなかった。みんな、MPAという言葉さえ知らなかったからだ。

懇談会という伝統的アプローチは効かなかったが、「ファブ・ファイブ」のキャンペーンは効いた。なぜか。「イラストなどを用いて視覚的に訴求する。それが一般の人と海洋環境をつなぐのに役立った」とウートンは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オープンAI、公益法人化でマイクロソフトと合意 評

ビジネス

米ADP、民間雇用報告の週次速報を開始 政府統計停

ビジネス

米CB消費者信頼感、10月は94.6に低下 雇用不

ワールド

米軍、太平洋側で「麻薬船」攻撃 14人殺害=国防長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中