最高にファビュラスな海洋生物たち「ファブ・ファイブ」とは?...5種類の「海のアイドル」に未来は託された

Selling the“Fab Five”

2025年3月26日(水)13時54分
デービッド・シフマン(海洋生態学研究者)

ただしMPA指定に対する地域社会の賛同を得る作業は複雑で、手間も時間もかかる。しかも、必ずしも好ましい結果が得られるとは限らない。漁期や漁区の制限で地域社会が被るコストは明確かつ直接的だが、その恩恵は不確実だ。

一方、同じ地域でも漁業に関わっていない人たちは、たいてい海の生物多様性などを気にもしていない。

そこでウートンらは先住民のコミュニティーとも協力し、まずは誰もが興味を持ち、保護したいと思いそうな海洋生物5種を選定した。オーストラリアアシカ、オーストラリアコウイカ、シロハラウミワシ、ホホジロザメ、そしてミナミセミクジラだ。

ウートンらはこの5種をキャラクターに仕立て、海洋生物保護の重要性を訴えるアウトリーチ(住民の参加と理解を求めるための働きかけ)活動を始めた。

具体的には、学校での「ファブ・ファイブ」アートコンテストの開催、地元の各種行事への「ファブ・ファイブ」マスコットの参加、美術館や博物館での「ファブ・ファイブ」関連企画の開催などだ。どの会場でも、ボランティアがMPAに関する教育的資料を配布した。


ビジュアル重視のこのアプローチは大成功だった。大勢の人が海洋保護の問題に関心を持ち、その効果は時間が経過しても衰えなかったとウートンは言う。よそのMPAを取り上げたメディアの報道も増え、それでMPAに対する認知度が一気に高まる効果もあった。

「アフリカのサファリで人気の動物がビッグ・ファイブ(ゾウ、ライオン、アフリカスイギュウ、サイ、ヒョウ)と呼ばれているのにヒントを得た」とウートンは語り、さらにこう続けた。

「人気の高い動物を選ぶことで一般の人々が海洋環境とつながりを持つきっかけをつくり、MPAの役割やその利点についての理解を促すことができた」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米軍、太平洋側で「麻薬船」攻撃 14人殺害=国防長

ワールド

トランプ氏、FRB議長をあらためて非難 後任候補に

ビジネス

アップル、時価総額4兆ドル突破 好調なiPhone

ビジネス

アングル:米財務省声明は円安けん制か、戸惑う市場 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中